
ホワイトハウス
2006年9月6日
米国政府は本日、強力で効果的な特別軍事法廷機構の設置に関する法案を提出した。この機構は、テロとの戦いに勝利し、公正な正規の裁判でテロリストを訴追できるようにする、という大統領の目的を達成する一助となるものである。戦争犯罪やその他のテロ関連の犯罪行為について、敵戦闘員を拘留、尋問、そして必要に応じ、訴追することは、わが国の防衛とテロとの戦いに勝利するために不可欠である。
- ハムダン対ラムズフェルド訴訟での最高裁判所の判決に従い、政府は連邦議会と協力し、次の条件を満たす敵戦闘員の訴追プロセス設置に取り組んでいる。
- テロリストが法の裁きを受けることを確実にする。
- 敵と戦場の本質を認識している。
- わが国の安全保障上の利益を守っている。
- わが国の価値観を支持している。
- 被告に十分かつ公正な裁判を受ける機会を与える。
- 政府案は、広範にわたる省庁間の審議や、連邦議員や米軍のあらゆる部門に属する軍の法律専門家との協議の積み重ねの結果である。各軍の法律専門家や国防総省、その他関連省庁に所属する多くの弁護士が、数回にわたり、本法案に対する意見を提出するとともに、政府の審議に積極的に参加した。彼らの意見と提言の多くは本法案の条項に反映されている。
新たな特別軍事法廷法典の策定
本法案に盛り込まれた新しい特別軍事法廷法典(CMC)は、統一軍事司法法典 (UCMJ)の関連条項を特別軍事法廷という文脈に合わせて修正している。政府は、UCMJの手続きを慎重に検討し、特別軍事法廷に適切と思われる特定のUCMJの規定を採用あるいは修正した。本法案は、特別軍事法廷による、アルカイダ、タリバン、その他の国際テロリストのメンバーをはじめとする、不法敵戦闘員の裁判について規定するものであり、米国連邦法典第10編第47章のUCMJに続く第47A章として、CMCを成文化するものである。
本法案は、それが理にかなうものであれば、テロリストに対しても既存の軍法会議手続きを採用するが、特別軍事法廷手続きと、米国の軍人を裁くための軍法会議手続きとを区別している。特別軍事法廷手続き案は、米国軍人を対象とする軍法会議に適用されるUCMJ規定とは区別され、施行規則も異なる。
CMCは、多くの点でUCMJの枠組みを踏襲する。本法案が設置する特別軍事法廷の制度では、軍裁判官が裁判長を務め、米軍から選出された構成員と、各軍法務部の訴追者および弁護人で構成される。被告は、希望すればさらに民間弁護人を雇うことができる。裁判手続き、判決、中間上訴の審理は、現在UCMJで規定される手続きにおおむね等しい。また本法案は、2005年拘留者取扱法(DTA)が規定しているのと同様、米国コロンビア特別区巡回控訴裁判所による上訴審理についても規定している。
- 本法案は、軍法会議手続きと同様に、法律と証拠の問題を裁定するという裁判官の伝統的な権限を軍裁判官が有すると規定している。軍裁判官は、議決権を持つ特別軍事法廷の構成員ではない。
- 本法案は、特別軍事法廷の構成員の数の下限を、3人から5人に引き上げるとともに、死刑を求刑する裁判では、12人の構成員が審理に参加することを義務付けるものとする。死刑以外が求刑されている裁判で有罪とするには、参加する全構成員の3分の2が有罪の票決を下さなければならない。UCMJと同様、死刑は、参加する構成員12人の全員一致の票決を必要とする。
- 本法案は、UCMJで規定される上訴手続きと同等の正式な軍の上訴手続きを提案するものである。連邦議会は、法律問題に関する上訴審のために、特別軍事法廷の上訴裁判所を国防総省内に設置するものとする。また、有罪判決を受けた被告はいずれも、宣告された刑の長さにかかわりなく、米国コロンビア特別区巡回控訴裁判所に上訴する権利を有する。最高裁判所は、コロンビア特別区巡回裁判所の決定を審理することができる。
- CMCは、被告に対し、次を含む実体的デュープロセス(適正手続き)の権利を与える。
- 被告は、十分かつ公正な裁判を受ける権利を有する。
- 被告は、できるだけ速やかに自分にかけられた容疑について知る権利を有する。
- 被告は、合法的かつ法的能力を有する証拠により合理的疑いを越えて有罪と立証されるまで無罪と推定され、立証責任は訴追者側にある。
- 被告は、軍弁護人や自分で雇い入れた民間弁護人などに弁護を依頼する権利を有する。
- 被告は、政府が所有する証拠を含む、証人やその他の証拠を入手する相応の機会を有さなければならない。
- 訴追者側は、自らが知りえた無罪を証明する証拠をすべて被告側に開示しなければならない。
- 被告は、訴追者側の証人に反対尋問を行う権利を有する。
- 被告は、特別軍事法廷の手続きにおいて、自分に不利な証言をしない権利を有する。
- 証拠は、それが思慮分別のある人間にとって証拠としての価値を持つと裁判官が見なした場合にのみ採用を認められる。また、不公正な偏見を持たせる危険が、その証拠としての価値を大幅に上回る場合は、除外されなければならない。
- 拷問によって得た供述は、被告に対する不利な証拠として認められない。
- 強要された疑いのある供述は、供述の信頼性を失わせる、または証拠としての価値を低減させる状況で供述を得たと裁判官が見なした場合には、証拠として認められない。
- 何びとも、特別軍事法廷あるいはその構成員が裁定または判決を下すに当たり、特定の行動を取るよう強要したり、不正手段を使って、その行動に影響を及ぼそうとしてはならない。
- 特別軍事法廷の手続きは、裁判官が特定の裁定を行なう特別の場合以外は公開しなければならない。
- 被告は、いかなる有罪判決を受けた場合でも、コロンビア特別区巡回裁判所への上訴を含む上訴手続きを、少なくとも2回行う権利を有する。
- 被告が、同じ罪で再度裁かれることはない。
本法案では、UCMJ の規定がテロリストの裁判では不適切あるいは非実用的な場合には、UCMJと異なる規定を採用している。
- CMCでは、UCMJのミランダ要件が削除されている。本法案では、実際の特別軍事法廷手続きにおける被告の黙秘権を認めている。しかし、UCMJで規定されているミランダ権利は、民間訴訟の規則よりも広範に及び、拘留されているテロリストを尋問することによる情報収集を妨げる、あるいは制限する可能性がある。政府は、テロリスト戦闘員の尋問においては、事前のミランダ警告を義務付ける必要はないと考える。
- CMCは、信頼性が高いものであれば、伝聞証拠を含む、立証能力のある証拠をすべて採用すると規定している。特別軍事法廷は、テロとの戦いの戦場から、海外のテロリストの隠れ家まで、あらゆる場所から収集された証拠に基づいて犯罪を裁かなければならない。特別軍事法廷の場合には、信頼できる伝聞供述を検討できるようにすることが不可欠である。なぜなら、多くの証人が、強制的に出廷させることが難しいと思われる外国人である可能性が高く、また、軍事的必要性、投獄、負傷、死亡などの理由で出廷できない可能性があるからである。国際法廷も同様に、出廷できない第三者が行った伝聞供述について、証人が証言することを許可する必要性を認めている。
- 本法案には、被告の立ち会いなしで機密証拠を採用することを制限する厳格な規定が含まれる。政府は、特別軍事法廷は、特別な状況下では、被告の立ち会いなしで機密証拠を採用できるようにしなければならないと考える。拘束したテロリストと機密情報を共有することは、特に、戦争が終わる前にテロリストが釈放される可能性がある場合、米国の安全保障に深刻な危険をもたらす可能性がある。特別な状況において、裁判官が正当で公正と見なした場合には、特別軍事法廷は、厳格な条件に従い、機密証拠を検討することができる。
- CMCは、いかなる機密証拠についても、被告の立ち会いなしで採用する前に、かかる証拠を機密扱いにした行政府の省庁の長が、被告との証拠の共有が国家安全保障に悪影響を与える可能性があること、また、その機密扱いが最大限に解除されていることを証明しなければならないことを規定する。
- 被告を立ち会わせないことは機密情報保護のために正当であり、機密扱いでない要約や編集された証拠は代用として十分でなく、また、被告の立ち会い拒否は必要以上に拡大されることはなく、十分かつ公正な裁判を受ける被告の権利を侵すことにはならないという具体的な裁定を、軍裁判官が下す必要がある。
- 被告には、立ち会いが認められなかった審理のすべての部分について、編集された審理記録と採用されたすべての証拠の機密扱いでない要約を、可能な範囲で与えられねばならない。
- 「秘密裁判」は行われない。機密証拠の採用は特別な手続きであり、特別な状況下で裁判官が適切かつ公正と見なした場合のみに使用されるものと考える。
ジュネーブ条約共通第3条の定義
本法案には、ジュネーブ条約共通第3条が、アルカイダとの交戦に適用されるという連邦最高裁判所の決定に対応した規定が含まれている。制定法による定義がなければ、共通第3条の適用は、アメリカをテロ攻撃から守るために戦う人々を、外国の裁判所の影響を受ける可能性のある不明確な法的基準の下に置くことになる。従って、米国の文民および軍の指導者は、共通第3条に基づく米国の義務について、法律による明確な定義を与えるよう連邦議会に要請した。
共通第3条で用いられる用語には、本質的にあいまいなものがある。共通第3条の規定の多くは、「生命を脅かす暴行」、「殺人」、「体の切断」、「拷問」および「人質」といった、普遍的に非難される行為を禁止している。しかしながら、共通第3条はまた、「個人の尊厳に対する侵害、特に侮辱的で体面を汚す待遇」も禁止している。この文言は、不確実で予測し得ない適用を招きやすい。
本法案で明確に定義しなければ、テロとの戦いに参加する米国政府職員に現在適用されている基準である共通第3条は、米国以外の裁判所や政府の解釈が変化するに従って、変わっていく可能性がある。最高裁判所は、共通第3条のような条約の規定を解釈する際には、国際法廷が条約文言に与えた意味には「十分な配慮」が与えられべきで、他の締約国による条約の解釈も「相当の重み」を与えられるべきだと述べている。
テロとの戦いにおいて、米国の拘束下にある拘留者の取り扱いを規定する基準は、米国の国際的義務との整合性を保ちながら、米国の法律によって明確に定義されるべきである。本法案では、連邦議会がすでにDTAの中で採択した米国憲法上の基準に照らし合わせ、共通第3条に基づく米国の義務を定義している。
- 昨年、拘束されたアルカイダのテロリストの取り扱いに関する基準について、大きな国民的議論が起きた後、連邦議会はDTAを採択した。DTAは、米国憲法修正第5条、第8条および第14条に従って定義するように、国籍あるいは地理的位置にかかわらず、米国が拘束するすべての拘留者に対し「残虐、非人道的、または品位をおとしめる扱い、あるいは処罰」を行うことを禁止するものである。
また、共通第3条で使われているあいまいな用語の意味とその適用は、刑事責任を負う可能性についても問題を提起している。戦争犯罪法(合衆国法典第18編第2441条)の下では、米国政府職員による共通第3条のいかなる違反も、重罪と見なされる。
- 政府は、テロとの戦いで拘留者の取り扱いを要請された人々のために、戦争犯罪法を明確かつ疑問の余地がないものとする義務があると考える。これを実現する最も確実な方法は、共通第3条違反として罰することができる戦争犯罪を構成する特定の犯罪行為のリストを作成することである。
拘留者の司法審査請求への対応
本法案は、DTAの司法審査規定が、現在連邦裁判所で未決となっている数百件の人身保護請求には適用されないというハムダン判決に対処するものである。本法案は、拘留者による拘留あるいは特別軍事法廷での裁判に対する異議申し立てについては、すべてDTAが適用されることを明らかにし、戦闘員の地位に関する審査裁判所(CSRT)の最終決定と特別軍事法廷の判決のみ、審査を認めると明確に規定している。政府は、これが連邦議会の意図するDTAの目的であり、CSRT、または特別軍事法廷の裁判が完了するまで、被告の上訴手続き請求能力を制限することは理にかなったことであり、戦時の敵戦闘員として合法的に拘束されたテロリストのあらゆる異議申し立てを審理するために、米国の裁判所が乱用されるべきではないと考える。


駐日米国大使