
*以下は、2004年11月26日付日本経済新聞朝刊8面に掲載されたアラン・P・ラーソン国務次官の寄稿を、日本経済新聞社の許可を得て転載したものです。
復興へ経済政策軌道に
ラーソン米国務次官寄稿
アラン・P・ラーソン米国務次官(経済・農業担当、写真)は日本経済新聞に寄稿し、イラクの復興に向け、日本を含む先進各国の支援が欠かせないとの認識を強調した。内容は以下の通り。
イラクを巡る最新の展開は、先週末、主要債権国会議(パリクラブ)がイラクの対外公的債務の80%削減で合意したことである。この合意はイラクの政治的・経済的復興を推進する上で大きな国際的貢献を意味する。
《経済的成果》 1979年当時、イラクの一人当たりの生活水準はイタリアと肩を並べていた。しかし、フセイン政権の崩壊で国内総生産(GDP)は最貧国の水準まで落ち込み、イラクは世界最大の債務国になってしまった。この苦い遺産は深刻な治安情勢とあいまって、同国の経済発展にとって大きなハードルとなっている。
一方で、イラク政府の政策運営が実り、今年1−10月の生産高は前年同期比51.7%増となった。今年の国民1人当たり所得は、昨年の約500ドルから、780ドルに上昇する見通しだ。
独立した存在となった中央銀行もインフレ抑制に成功。今年1−8月の消費者物価指数上昇率は5.7%と前年同期の46%を大きく下回った。通貨新ディナールの対米ドルレートはこの1年で、27%上昇した。
石油関連設備への攻撃が続く中、イラク石油省は生産量の回復でも成果をあげ、今年9月には原油生産は日量254万パレルと戦争前の水準にもどった。
《世界経済の一員に》 イラク政府は世界経済の一員に復帰する努力も続けている。今年2月、世界貿易機関(WTO)のオブザーバー資格を得た後、正式メンバー入りを目指している。何カ月にもわたる交渉の結果、9月には国際通貨基金(IMF)と4億3600万ドルにのぼる融資再開にも合意した。過去20年で初の合意は、経済政策が軌道に乗っていることを示している。
イラク復興は幅広い国際的支持に立脚している。国連、主要8カ国(G8)先進各国ほか、2003年10月、マドリードでの主要援助国会議で約束された総額140億ドルの贈与・貸し付け、米国の援助約束180億ドルなどがその柱である。国際社会がイラクの潜在的経済能力と、地域での重要性を強く認識していることにほかならない。
《高い能力と勇気》 今年9月、バグダッドで開いた米・イラク合同経済会議に出席した際、感銘を受けたのはイラク国民の専門知識の深さと復興への熱意だった。彼らが非常に困難な状況にもかかわらず、これまで達成した経済的成果は彼らの持つ高い能力と勇気を証明している。
《先進国は援助の手を》 イラクは依然、先進各国の援助を必要としている。援助の中身は、短期・中期・長期の復興をもたらすための中軸となる治安の確保のほか、インフラの再建や新規投資などが欠かせない。イラク政府が来年1月30日予定の初の民主的選挙に向け準備を進めているときだけに、先進国の援助は特に歓迎される。
先進国のイラク支援重要
復興へ経済政策軌道に
ラーソン米国務次官寄稿
アラン・P・ラーソン米国務次官(経済・農業担当、写真)は日本経済新聞に寄稿し、イラクの復興に向け、日本を含む先進各国の支援が欠かせないとの認識を強調した。内容は以下の通り。
イラクを巡る最新の展開は、先週末、主要債権国会議(パリクラブ)がイラクの対外公的債務の80%削減で合意したことである。この合意はイラクの政治的・経済的復興を推進する上で大きな国際的貢献を意味する。
《経済的成果》 1979年当時、イラクの一人当たりの生活水準はイタリアと肩を並べていた。しかし、フセイン政権の崩壊で国内総生産(GDP)は最貧国の水準まで落ち込み、イラクは世界最大の債務国になってしまった。この苦い遺産は深刻な治安情勢とあいまって、同国の経済発展にとって大きなハードルとなっている。
一方で、イラク政府の政策運営が実り、今年1−10月の生産高は前年同期比51.7%増となった。今年の国民1人当たり所得は、昨年の約500ドルから、780ドルに上昇する見通しだ。
独立した存在となった中央銀行もインフレ抑制に成功。今年1−8月の消費者物価指数上昇率は5.7%と前年同期の46%を大きく下回った。通貨新ディナールの対米ドルレートはこの1年で、27%上昇した。
石油関連設備への攻撃が続く中、イラク石油省は生産量の回復でも成果をあげ、今年9月には原油生産は日量254万パレルと戦争前の水準にもどった。
《世界経済の一員に》 イラク政府は世界経済の一員に復帰する努力も続けている。今年2月、世界貿易機関(WTO)のオブザーバー資格を得た後、正式メンバー入りを目指している。何カ月にもわたる交渉の結果、9月には国際通貨基金(IMF)と4億3600万ドルにのぼる融資再開にも合意した。過去20年で初の合意は、経済政策が軌道に乗っていることを示している。
イラク復興は幅広い国際的支持に立脚している。国連、主要8カ国(G8)先進各国ほか、2003年10月、マドリードでの主要援助国会議で約束された総額140億ドルの贈与・貸し付け、米国の援助約束180億ドルなどがその柱である。国際社会がイラクの潜在的経済能力と、地域での重要性を強く認識していることにほかならない。
《高い能力と勇気》 今年9月、バグダッドで開いた米・イラク合同経済会議に出席した際、感銘を受けたのはイラク国民の専門知識の深さと復興への熱意だった。彼らが非常に困難な状況にもかかわらず、これまで達成した経済的成果は彼らの持つ高い能力と勇気を証明している。
《先進国は援助の手を》 イラクは依然、先進各国の援助を必要としている。援助の中身は、短期・中期・長期の復興をもたらすための中軸となる治安の確保のほか、インフラの再建や新規投資などが欠かせない。イラク政府が来年1月30日予定の初の民主的選挙に向け準備を進めているときだけに、先進国の援助は特に歓迎される。


駐日米国大使