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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

日米経済関係:日本経済回復への期待

在日米国大使館 ジェームス・ズムワルト経済担当公使
2004年5月21日
於:近畿化学協会第21回通常総会

はじめに

 皆さん、こんにちは。ただいまご紹介いただきました米国大使館のズムワルトです。どうぞよろしくお願い申し上げます。日頃より、米国大使館、総領事館の活動にご協力いただき、ありがとうございます。また、本日、近畿化学協会の皆様とお話ができますことを、大変光栄に思っております。この機会を与えていただきました南会長はじめ、関係者の皆さんに心よりお礼申し上げます。このご招待のおかげで、私は東京から1日逃げ出すことができました。

 阪神タイガースが優勝すると、それは関西のみならず日本全体の経済成長の前ぶれとなるという言い伝えがあるように伺っています。タイガースは、1964年と1985年に優勝しましたが、その後、日本経済は長期にわたる繁栄をみせました。昨年、阪神タイガースは、再びセントラル・リーグのペナントを勝ち取りました。おめでとうございます。昨年も、関西そして日本経済には、はっきりとした回復の兆しがみえました。UFJ総合研究所が4月19日に発表したレポートによれば、2003年度における関西地区の実質経済成長率は、2.9パーセントに達し、日本全体の成長率を0.2パーセント上回りました。これは、過去8年間で初めてのことです。このたび、大阪を訪れましたのは、私自身の目で、そのような経済的な変化を見たかったからです。

 大阪を訪れたもう1つの理由は、日本経済における規制撤廃・緩和や構造改革に向けた最も活気に満ちた努力は、今日では、日本の首都ではなく、東京以外の各県、各市で行われているからです。関西では、すでに49の「規制改革特区」が設立されています。大阪府は、8つの特区を設立し、さらに、首相を長とする構造改革特別区域推進本部に対して、20にのぼる新たな特区構想を提案しています。そしてこれらの特区がまた経済改革と関西の成長を促進することでしょう。

 後ほど詳しく述べますが、米国政府は、経済改革に向けたこれらの試み、また、「地方でできることは、地方に任せる」という小泉首相の公約を実現しようとする皆様の努力に関して、大きな関心を抱いています。この話のあとで、私は、日本経済の将来に対する皆様の期待や要望に関連して意見を交わしたいと思います。もちろん、皆様からご質問があれば、喜んでお答えいたしますし、日本経済の活性化のために必要な政策について、皆様のご意見を聞かせていただきたいと考えています。

 本日、私は、日米経済関係について、さらに、米国が日本の経済回復を特に熱心に支援する理由についてお話をさせていただきたいと思っています。このような課題を取り上げると、ほとんどの日本の方々は、日米2国間の貿易問題について、話をすると思われるようです。貿易問題は依然として重要な課題ではありますが、現在では米国の関心は日本の喫緊する国内経済状況に移ってきています。本日、私は皆様に、なぜ米国が日本国内の経済的課題に大きな懸念を持ち続けているかにつて、ご説明したいと思います。

日本は米国の最も重要な友人であり同盟国である

 まず、私は、今日の日米関係が重要である理由は、まさに、米国と日本が、経済面や政治面においても、そして戦略地政学的な面においても、強固なパートナーシップを享受しているからであることを強調したいと思います。我々は、共産主義の衰退、国際政治の舞台で主要なアクターとしての中国の台頭、そして拡大するテロリズムの脅威など世界における様々な変化の中で、過去50年にわたり、日米間のこの強力なパートナーシップを維持してきました。

 また、我々は、日米経済を合わせたその大きさ故に、日米関係が、日米両国以外の人々に対しても極めて重要な意味を持つことを理解する必要があります。世界の2大経済国として、世界情勢を建設的な方向へ導くため、我々は共に積極的に働くことができます。例えば、中国においては、日米の企業は、中国の知的財産制度を強化し、「法の支配」を導入するために取り組んでおり、アフリカにおいては、公衆衛生の体制を強化するために協力しています。

 米国は日本との広範にわたるパートナーシップから利益を受けるわけですから、「失われた10年」といわれる日本の経済停滞によっても、やはり、影響を受けました。我々は、日本の経済的弱体化は、日米両国がアジア太平洋地域における経済的、政治的発展に向けて共に取り組もうとする能力を弱めるのではないかという懸念をもっていました。多くの日本の方々と同様、我々も、世界経済の成長のエンジンとして機能する日本経済、また、新しいアイデア、新しいビジネス・モデル、新しい製品を提供し、世界全体を刺激する日本のダイナミックかつ革新的な民間部門の復活を心待ちにしています。

現在の日米関係は、前例のないほど強固である

 さて、強固な日米関係という第一の点に戻りたいと思います。現在の日米関係は、過去に例を見ないほど良好なものです。ブッシュ大統領と小泉首相の温かい友情は、現在の日米関係を象徴するものです。私は、小泉首相はブッシュ大統領が日本を対等なパートナーと見ていることを認識されていると考えます。また、私は、米国の国民は小泉首相を、世界における大国としての日本の役割を喜んで受け入れる指導者の象徴として見ていると考えます。

 日米関係は、共有する関心や懸念によって、より強固なものとなり、また、長年にわたって継続されています。我々は、朝鮮半島から生ずる脅威に対処するため共に取り組んでいます。我々は、テロとの戦いに勝利しつつありますし、また、このような共有された努力をやめることはできません。我々は、イラクに安定をもたらし、中東における緊張を緩和するために、引き続き努力します。さらに、我々は、先進国、開発途上国双方の利益となるように、WTO交渉を活性化しなければなりません。これらの事柄は、日米が建設的に協力している幾つかの例にすぎません。

 日米関係は、世界情勢における大きな変化の下でも持続されてきました。このような強固なパートナーシップや友好関係は、単に現在における我々の共有の利益によって維持されているのではなく、もっと深遠なものに由来します。私は、緊密な日米関係がこのように長期にわたって維持されてきたのは、米国と日本は共通の価値観を有し、こうした共通の価値観が、我々のに影響を与えるかもしれない変化が世界に生まれても、それに対して両国の友好関係を維持することに役立ってきたからだと考えます。

 我々の共通の価値観とは、民主主義に対する信念、人権尊重に対する願望、そして、成長促進のためには、市場経済が最も効率的な方法であるとする信念です。さらに、我々は、全世界で持続的な経済成長を促進することも共通の関心事であるとする信念も共有しています。ですから、これらの共通の価値観が、世界秩序を保護し、強化しようとする、世界の2大経済国である日米両国の利益を下支えしているのです。

日米協力で、平和と経済的繁栄を促進できる

 私は、日米関係が強固であり、また、持続的である理由を説明しました。しかし、このことがなぜ日米以外の人々にも関係するのでしょうか。世界に対する日米関係の重要さは、両国経済の規模やその影響度によって説明することができます。日米経済を合わせると、世界経済のほぼ半分に相当します。我々が努力しているように、日米が協力した場合、我々の地域のみならず全世界に対して極めて大きな影響力を行使することができます。

 我々は、日米協力の例を世界の多くの場所に見いだすことができます。スリランカにおける民族対立を平和裏に解決しようとする努力の中で、日米両国は中心的な役割を果しています。我々は、スリランカに対して経済援助を供与することによって、同国の2つの敵対勢力が20年に及ぶ対立を平和的に解決する方策を模索するよう説得を続けています。アフガニスタンでは、国家としての形をつくり上げるため、同国内の多くの地域をつなぐ道路の建設に日米両国は協力しています。このように我々の経済援助は、アフガニスタンの人々に光明を与え、平和と安定に向けた期待をより大きなものとしています。テロとの戦いにおいては、日米両国は、国際金融システムをつうじて、テロリストへの資金の流れを遮断するといった行動においても協力しています。日米を合わせた経済規模により、我々は影響力を持ち、そのような影響力を建設的に行使すれば、多くの問題に取り組むことができます。

経済停滞は日米が共に働く力を弱めるか?

 従って、日米関係を考える場合、我々は、その強さ、その質の持続性、その世界的な影響力について留意する必要があります。日米間の経済関係に目を向ければ、明らかな問題が1つあります。米国の考え方からいえば、日米間の最も重要な経済的課題は、単に2国間の経済関係ではありません。米国の視点からいえば、経済面における我々の最も重要な懸念は、日本の伸び悩む経済であり、また、日本の経済回復を持続的なものとすることです。

 最近の日本に関する経済指標は心強いものです。国内総生産(GDP)の実質成長率は、2003年には2.7パーセントまで上昇し、デフレはより緩やかなものとなり、失業率も4.7パーセントまで低下しています。我々は、これらの結果を、多くの理由から歓迎しています。

 日本経済に関する我々の主要な関心は、日本経済の活力の回復です。この米国の懸念の理由は明白です。それは、我々は、活気に満ちた日米の2国間関係から恩恵を受けるのであり、また、我々は、あらゆる分野において日本との協力を継続したいと考えるからです。しかし、日本の経済回復が持続しなければ、日本は世界における影響力を徐々に失い、平和、民主主義、そして経済成長の促進に向けて我々が共に取り組む力を弱めるかもしれません。

 前にも述べましたように、日本経済の成長に関するこの懸念の理由の1つは、日本経済の規模です。日本経済は世界のGDPの14パーセントに相当します。世界経済における主要国が、長期にわたってその潜在成長率に満たない経済成長にとどまれば、その結果は日本の内外をとわず、すべての人々の利益を損なうことになります。日本の経済停滞は、もちろん、日本の人々に最も大きな痛みを与えますが、それは同時に、米国に住む人々にも、また日本の他の貿易相手国や隣国にも影響を与えます。

 長期におよび日本経済の停滞が米国に痛みを与えたもう1つの分野は、世界における共通の目的達成を支援するために、日本が米国と共に働く力が低下することです。1つの典型的な例は、日本の対外援助予算の縮小です。本年、日本はその対外援助予算を前年比で4.8パーセント削減する予定です。日本の政府開発援助(ODA)予算は、4年連続で縮小されることになります。日本は、すでに、世界最大の対外経済援助国としての地位を失いました。昨年マドリードにおいて、日本は、イラク国民によるその荒廃した経済の再建を支援するために、極めて寛大な援助計画を発表しましたが、私は、イラクに対する援助は、日本のその他の有益な対外援助を削減することにで賄われるのではと危惧しています。なぜならば、日本は、その経済不振を考慮した場合、援助計画の規模を維持する余裕はないと述べているからです。この予算上の制約は、日本経済の停滞が日本国民にとっての問題であるばかりでなく、いかに日本の海外の友人やパートナーにも痛みを与えているかを示す、1つの例にすぎません。したがって、我々は、日本が持続的な成長路線を維持するために必要な政策を講じることを、心から期待しております。

「失われた10年」の経済的影響

 この問題の深刻さを、簡単に数値化して、皆様にお示ししたいと思います。もし日本が1990年以降、その潜在成長率に見合った経済成長を遂げていれば、現在の日本経済の規模は、実態よりも25パーセント大きなものとなっています。この点は非常に重要ですので、もう一度繰り返します。1990年以降、日本経済がその潜在成長率に見合った成長を遂げていれば、今日の日本経済は、実態よりも25パーセント大きなものになっています。このことは、もし日本が10年前に、経済成長を回復するために必要な政策を講じていれば、日本の社会が高齢化する中で、年金資金の不足を補うというような問題は、現実よりはるかに小さな、はるかに印象の薄いものになっていたはずです。さらに、このことは、もし日本が、その経済改革を先延ばしにすれば、将来、こうした問題は更に大きな困難となるであろうことを意味するものです。

米国の最大の懸念:日本の「成長赤字」

 私が米国人と日米経済関係について話をする時、彼らが最初に心に描くものは、往々にして、日米2国間の貿易不均衡の問題です。しかし、私は、日米間の貿易問題は、もちろん重要ですが、我々が日本で直面している最大の問題ではありません、と答えます。我々にとって、主要な問題は、日本自身の「成長赤字」です。私が「成長赤字」という意味は、過去13年間にわたって見られた、日本経済の潜在成長力と実際の成長率とのギャップです。

 この問題は、米国にとって1つのパラドックスです。米国は、日本経済の成長を抑制するような政策によって痛みを受けるわけですが、同時に、我々は、日本の政治判断は日本の国内問題であることも認識しています。したがって、我々にできることは、日本に対して問題解決のための選択肢を示唆したり、あるいは、我々が同様の経済問題に直面した際の経験を日本に伝えることによって、日本が必要な経済改革を促進ことを奨励するというようなことに限られてしまいます。これらのことは、日米間で毎年行なわれている規制改革協議や投資協議のなかで反映されています。これらの協議のもとで、日米両国は、更なる規制改革や外国からの直接投資の拡大が経済活動を刺激するであろう分野を、お互いに指摘しています。これらの協議も今年で3年目となり、私は、成長を阻害する規制を検証し、削減するために大きな貢献をなしているものと確信しています。

 金融問題やマクロ経済問題を含む日本の経済的課題は、日本の銀行システムが日本社会における最も効率的な分野に資金を供給せず、その反対に、倒産することが許されなかったいわゆる「ゾンビ企業」に資金を注ぎ込み続けていることを示すものです。このことは、日本の労働者の大部分を雇用している中小企業は、成長に必要な資金を十分に調達できていないことを意味します。日本の銀行は、バランス・シートを改善しつつはありますが、日本政府の試算によれば、今なお、日本のGDPの少なくとも8パーセントに相当する不良債権に苦しんでいます。不幸なことに、デフレは将来に対する日本の消費者の自信を失わせています。物価が下がれば、消費者は支出を先延ばししようとし、結局は、経済をさらに低下させることになります。日本政府も日銀も、金融緩和政策をつうじて、最近の景気回復に貢献しています。 デフレはより緩やかになりつつあり、コア消費者物価指数も昨年10月にはプラス0.1パーセントと、66カ月ぶりに上昇に転じました。しかし、まだまだ、多くのなすべきことが残されています。

 そして最後に、もう1つ重要なことは、政府による過度の規制は、日本の経済活力や企業家精神をがんじがらめに押え込んでしまうということです。経済がよりオープンであり、より透明であれば、企業活動のコストは、より低いものとなります。

今後の方向:成長回復のための経済改革

 良いニュースとしては、日本政府は、自らが直面する問題を正しく認識し、理解しているということがあげられます。昨年来、日本がこうした問題と取り組むために講じてきた幾つかの施策は、我々を勇気づけるものでした。金融庁は、先般、りそな銀行、足利銀行を管理下におき、他行には不良債権の処理をさせました。これらの措置は、ある借り手には、経済的痛みをもたらしましたが、日本の銀行システムが、日本経済における生産性のより高い分野に対して資金の供給を開始することを可能にするものでした。長期的に見れば、これらの措置は、日本の経済成長を高めるものです。また、いわゆる「特区」において、まず、規制緩和の実験をし、成功すれば、それらの規制緩和措置を全国的に適用しようとする小泉首相の試みも我々を勇気づけるものです。本年1月19日に、小泉首相は、「地域経済の再活性化が、エネルギッシュな日本経済を実現するための鍵を握っている」と述べています。冒頭で申し上げたとおり、大阪府やその他の地方自治体は、この「特区」による機会を有効に利用しています。私は、皆様の努力が成功することを願っていますし、また、皆様の素晴らしいアイデアが全国的な規制緩和につながり、日本全体が恩恵を受けることができることを期待しています。皆様の8つの特区を含めて、全国に324存在する特区は、より競争力の強い、ダイナミックな経済を目指す日本の努力の始まりです。大阪府をはじめ、その他の地方自治体は、構造改革、経済改革は、地域経済を再活性化し、地域社会を改善するものであることを認識しています。内閣府が最近発表した試算によれば、1992年から2002年の期間に規制改革によってもたらされた経済効果は14兆円にのぼるとされていますが、地方自治体は、このようなデータを使い、中央政府やその官僚に対して、より大きな改革、より多くの特区の承認を迫っています。このような決意は、明らかに前向きなものです。我々は、このような規制改革が日本経済の成長を、大きく押し上げることができるという実際の経験となることを期待しています。

 日本の将来を予想する際、私は、日本が今年行う意志決定、特に、国内の経済問題に関して行う意志決定が、最近みられる好ましい経済成長を、日本が今後も維持できるか否かを決めることになると考えます。さらに、それらの意志決定は、十年後の世界経済における日本の位置づけや影響力を決めることにもなります。今、日本が、一時は崩壊しかかった銀行システムや、デフレ、規制改革など国内の経済的課題に断固として取り組めば、日本経済は健全な成長路線に再び戻ることができます。日本は、資本、労働力、知性という素晴らしい資源を有する豊かな国です。私は、日本は活気に満ちた経済成長を回復し、日本国民はもちろん、日本の経済的パートナーやその隣国の人々に対しても恩恵を与え続けることが出来るものと確信しています。

 また、私は、日本が経済改革を継続し、技術、ノウハウ、革新の源泉と呼ばれる国であり続けることも確信しています。このような刺激は、日本が1980年代の米国に対してそうであったように、今日の米国に対しても、また、アジア太平洋地域全体に対しても、極めて大きな、好ましいインパクトを与えます。更に、日本によるこのような経済政策は、我々2国間の強固な関係の継続にもつながります。そのような2国間関係のもとで、我々は、世界における多くの喫緊の経済的諸問題を解決するために、共に働くことができる経済的な力を持つことができます。

終わりに

 本日の私の話で、主要な点をもう一度簡単に繰り返せば、それは、日米関係は非常に強固であること、その関係は持続的なものであること、そしてそのような強固な、持続的な関係は、我々の共通の価値観や利益に由来するものであることです。世界のGDPのほぼ半分を占める日米の経済規模は、日米が協力すれば、世界に好ましい影響を与えることができ、また、困難な諸問題とも取り組むことができることを意味します。しかし、日本が長期にわたった経済停滞を終結するために必要な措置を継続的に実施し、現在の経済成長を維持することをしなければ、これまでそうであったような日米両国による効果的な協力は、より困難なものとなってしまいます。

 皆様のこの関西地区は、そのような過程において、重要な役割を担っています。もちろん、私は、阪神タイガースが今年は日本一になるように、応援をしていきます。その1つの理由は、日本が今年も好ましい経済成長を続けることを願っているからです。しかし、タイガースといえども、毎年優勝できるわけではありません。本当のところを言えば、日本が深刻な経済の構造的な問題と取り組むために必要な政策を実施し、長期的に持続可能な成長路線に復帰できるよう、私は、皆様が「内圧」を使って、東京にいる政策担当者を押し動かしていただきたいと思っている次第です。

 ありがとうございました。