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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

日米経済関係

マイク・マハラック在日米国大使館経済担当公使

2003年3月18日

九州経済フォーラムでの講演=福岡市

 ここ九州は、19世紀、明治維新に参加し、新しい日本をつくりだした多くの侍たちのふるさとであり、そのような地を訪れることができたことは、私にとって、大変幸せであると同時に光栄です。明治維新が日本の歴史に与えたと同様の重要なインパクトを、日本の社会、経済、そして政治に与えるであろう新たな変革に向けて、現在の日本は、まさにその瀬戸際にあると言う多くの人がいます。また、本年は、ペリー提督が初めて日本を訪れてから、ちょうど150年目となる記念の年でもあります。ペリー提督の来日とともに幕が開かれた日米間のパートナーシップは、現在においては、過去に例を見ないほどに、強固なものとなっています。

 日本は、米国にとって強力かつ不可欠なパートナーとなったばかりでなく、日本自身、緊張状態にある世界におけるキー・プレーヤーであります。しかし、世界におけるこのような極めて重要な役割を果たし続けるためには、日本は、強い経済を日本自体で、又世界で必要とします。世界中で経済が不確実なものとなり、世界経済が成長しないと、平和を維持することは、より難しいものとなります。過去10年にわたり、米国は、世界経済の拡大のためのエンジンとなってきましたが、現在の米国は、成長の鈍化とその他の経済問題に直面しています。日本の経済はこの10年間停滞し、長引くデフレが、消費者や投資家の信頼を損ない、金融制度を弱め、潜在的に強力な経済からエネルギーを奪いとっています。

 全世界的な課題においてもアメリカと同等の強力なパートナーとしてのパワーを日本が持つ事を可能にする、力強く活力に満ちた日本経済をアメリカが求めるのも、こういった経済的、戦略的な理由があるからです。経済的に強い日本が意味するものは、日本企業ばかりでなく、米国企業やその他の国の企業が自由に競争し、彼ら自身、日本、そして世界のその他の国々にも利益をもたらすということです。本日、私は、現在の日米経済関係、そして、日米経済関係をより緊密にするために、われわれが何を期待しているか、また、現在の経済的困難から抜け出すための日本の努力に対して、いかにしてわれわれが協力できるかについて、お話しさせていただきたいと思います。

 人々が中国について何と言おうと、米国と日本、この2カ国は、世界における経済大国です。アメリカを訪れた日本の子供たちが「見て、お母さん、アメリカにもマクドナルドがあるよ」というのと同様に、日本を訪れて、ホンダの自動車を見たアメリカの子供たちは「見て、お母さん、日本でもホンダの車が走ってるよ」と言います。これら2つの例は、民間部門における日米経済が、いかに統合されたものになっているかを表わしています。

 政府間で日米経済関係を取り扱う全体的な枠組みは、2001年にブッシュ大統領と小泉首相との間で合意された「成長のための経済パートナーシップ」と呼ばれています。このパートナーシップのもとに、広範にわたる経済分野における課題を検討するための、いくつかの作業部会が作られていますが、これらはすべて、3つの大きな課題に集約することができます。まず、不良債権の処理ですが、より重要なことは、不良資産を、生産的に経済利用できる状況に戻すことです。2番目は、デフレの克服、3番目は構造改革の推進です。

 われわれは、米国側から提案する課題を、日本政府、特に、小泉内閣が抱える課題に適応したものとなるよう話し合いました。私は、これらの3つの大きな課題について、ひとつずつ、お話しさせていただき、われわれがこれまでどのような話し合いを行ってきたかについて、ご説明します。私の話のなかで、同じ事をくり返しているように思われることがあるかもしれませんが、それはこれら3つの課題が、互いに関連しているため、お互いに支援し合わないと先へ進む事ができないからです。例えば、デフレを止めるためには、構造改革や銀行改革を支持する中央銀行の強い意志が求められます。同様に、銀行改革や産業構造改革は、経済状況に対応するための柔軟な経営を阻害するいくつかの規制を撤廃しないと、推し進めることはできません。

 デフレは、今日の最も中心的課題であり、最も複雑です。この点について、日本政府とわれわれの間には、基本的に意見の相違はありません。デフレは止めなければなりません。多くのエコノミストは、いかにデフレと戦うかについて、さまざまな経済理論を展開しています。われわれは、日銀、日本政府、そして民間部門がさまざまに協調し、市場の安定に結びつくような市場の環境づくりをする必要があると考えます。われわれは、竹中大臣、塩川大臣が日銀総裁とともに、強力なチームをつくり、この重大な問題の改善に向けて適切な政策を講じるものと確信しています。

 皆様は、不良債権問題について、メデイアその他で、さまざまな議論がなされていることをよくご存知のはずです。不良債権の裏側には、必ず不良資産があります。一時しのぎの手段で、倒産を免れている企業は、将来より有効に利用することができ、雇用を提供するはずの土地や労働力、そして資金を塩漬けにしてしまっています。われわれは、外国の投資家が、時には「ハゲタカ・ファンド」と呼ばれ、ある人々は、どうも日本の優良な資産は、皆このようなファンドに持っていかれてしまうと懸念していることを理解しています。このような議論を聞くと、私は、米国に対する日本の投資に反対した人がアメリカにもいたということを、思い出します。しかし、このような人々は間違っていました。日本からの対米投資は、われわれ自身の経済を強化し、米国をさらに強く、競争力のある国にしたのです。このような議論は、日本においても決して正しいものではありません。米国の企業は、彼ら自身と日本の双方の利益のために、日本において長期的な投資をおこなっています。そして、私は、資金やノウハウを今すぐにでも提供できる企業が、国外にたくさんあることを皆様にお伝えすることができます。

 カルロス・ゴーンは、日産を日本から持ち去りませんでした。厳しい企業再建の後、日産は現在、給与の引き上げと雇用の拡大をはかろうとしています。リップルウッド・ホールデイングも、シーガイアを日本から取り去るようなことはしませんでした。リップルウッドは、失われたはずの仕事を人々に提供し、シーガイアを、元のような収益のある事業へと戻そうと努力しています。

 もうひとつの例は、大阪のさわやか銀行です。さわやか銀行は、倒産寸前でしたが、米国資本によってよみがえり、ほとんどの従業員を失業から救いました。これまでに多くの国々が、不良資産問題を経験し、最後にはそれを解決してきました。米国もそうですし、スウェーデンや韓国もそうです。皆、共通の経験を持っているのです。最初の資産売却は低価格ですが、しかし、徐々に、投資家が、企業の再構築へ向けた努力が真剣であり、再建の可能性が大きいと感じ始めると、数カ月というよりも数週間という程度の期間で、資産価格は上昇し始めます。さらに、これらの国々は、もうひとつの共通の経験をしました。それは、最初の投資家の多くは外国の投資家だったことです。日本の投資家も、アメリカのRTCの資産売却に参加していました。もちろん、国内の投資家も、遅れをとっているわけではなく、ほとんどの企業再建は国内資本によって行われました。日本における状況が、他の国々とは異なると考える理由は、何もありません。

 日本政府は、産業再構築に真剣になりつつあります。産業再生機構(IRC)は、日本経済における真の再編に拍車をかけるために、極めて大きな役割を果たすものと思われます。

 その理由は、まず、IRCの存在自体が、問題を抱える企業がIRCに頼らず自分自身で問題を解決しようとすることを促すと思われるからです。企業がIRCに頼るということは、自分の再建計画を、官僚に評価してもらうということですが、彼らは多くの投資銀行や企業再建会社ほどその企業の事業について理解していません。そのため、私は、多くの企業は自分たちの問題を、官僚に頼らずに解決したほうがはるかに良い結果を生むと信じ、そのような方法をとるであろうと考えます。

 第2に、IRCは迅速に行動しなければならないことです。IRCの設置期間は、わずか5年ですから、企業も迅速に行動しないと、IRCを利用する機会を失ってしまいます。われわれは、IRCは産業再生に向けて、外部からの支援も求めるものと理解しています。日本企業の再構築を支援するために、日本の企業再建会社と外国の企業再生エキスパートは共に働くことになります。

 また、デフレと企業再構築、そして構造改革は関連したものですから、企業再生がスタートするやいなや、デフレ克服と規制制度改革のための適切な政策も加速していく必要があります。これにより、企業も、自分たちが深刻な状況に陥る前にリストラを促す環境が作り出される可能性があります。

 私が今お話ししたことは、信じ難いことのように聞こえるものと思いますが、これは、これまでやるやると言われてはいても、何年にもわたって何も行われず、問題のある銀行や企業が再建に向けたプロセスを開始することを促す、政府、特に金融庁の意志があるかどうかにこの問題の解決がかかっているからです。さらに、国内外の投資家にとっては、そのような再建プロセスが信頼に値するものである必要があるのですから、最初のいくつかの企業再生が世界的レベルの形で行われ、日本国内はもとより世界各国に対して、不良資産問題への取り組みが、今まさに開始されたことを明確に示すことが重要となります。これらの潜在的な問題はありますが、私は、IRCは日本経済の再生に向けて大きな貢献をすることは、疑いのないことだと考えます。

 日本との関係において、われわれが最も大きな部分であると考えるものは、先ほど私がお話しした3つの課題のうちの第3の点、つまり、構造改革、あるいは、規制制度改革です。われわれは、日本における規制制度改革を2つの側面から考えています。第1は、伝統的な規制改革で、個別の分野について、市場への参入や退出がより柔軟にできるようにするため、また、急速に変化する世界の経済環境に、日本がその経済をより容易に適応することを可能とするための規制改革はどの分野にあるかを検証しようとするものです。第2は、われわれの投資促進イニシアティブで、今年でその2年目に入ったわけですが、その目的は、投資家を日本に引きつけることができるような日本の経済構造改革に向けた努力に対して、必要な資金、技術、経営システムを提供することを支援できるようにするためには、どのような投資環境の変化が必要かを検証しようというものです。つまり、より好ましい規制環境と投資に対するより開かれた姿勢の両方に関係するものです。

 第1のタイプの構造改革のひとつの例として、私は、ある程度の進展はあるものの、まだまだ多くの仕事が残されている、IT・電気通信、そしてエネルギーという2つの分野について、少しお話しさせていただきたいと思います。この両分野は経済全体に影響するため、日本経済の再活性化のために重要です。より効率的なエネルギー部門、そして電気通信システムは、生産活動を改善し、多くの関連するビジネスに新しい道を開きます。われわれの規制制度改革作業部会では、エネルギー分野においては、どのような規制緩和が日本経済にとって意味があるのかについて日本政府と協議しています。われわれは、送電線のアンバンドル化、配電のための発電の分離、そしてエネルギーの安定供給の確保と市場メカニズムの最大化を同時に達成できる市場は、いかにすればつくりだせるかなどの課題を提起してきました。

 このような協議を支援するために、われわれは、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)から、エネルギー規制緩和の専門家を日本に招きました。彼らは、日本のエネルギー分野に関わるいくつかの諮問委員会で証言をし、エネルギー安全保障と安定供給の確保という日本の目標を、どうすれば緩和された規制環境のもとで達成することができるかを話し合いました。われわれの協議の内容は、現在、国会に提出されているエネルギー分野の規制緩和に関する法案の作成の際に、一定の役割を果たしてきました。われわれは、この法案が、電力およびガス事業に競争原理を導入し、日本の消費者に対するエネルギーの安定供給を確保できる市場を育成するための第1歩となることを期待しております。

 IT・電気通信の分野では、日本は、われわれとの協議に沿った重要な変化を成し遂げています。例えば、米国は、NTTの交換台に、他のテレコム会社が機器を併設することを認めることや、NTTのネットワーク施設の一部をリースすることを可能とするための規則の明確化を要望してきました。これらは、以前は主にISDNを意味したブロードバンド・サービスにおける競争の促進を助け、華々しいともいえる成果をあげています。日本におけるADSLの消費者向け使用料金は、今や、世界で最も安いものとなっています。

 NTT東およびNTT西に対する相互接続料金の問題については、結果は良いもの、悪いものが混ざり合ったものでした。過去3年にわたって料金の引下げに合意がなされ、新しい競争相手やサービスが市場に現れた一方、総務省は、料金を引き上げることによって、あたかも拡大した競争を阻害し、新規参入や新しい製品が市場に登場することを制限することを意図しているようにさえ見えます。われわれは、総務省が、そのような計画を再考し、相互接続料金の引下げに向けた世界各国の動きと歩調をあわせ続けることを期待しています。これにより、NTTのような支配的事業者はより効率的な経営をし、より多くの、より良いサービスを利用者に提供せざるを得ないようになるでしょう。

 残念なことに、総務省はさらに電気通信事業に対する規制を草案し、発布するための独立した規制機関の設置を求める米国、EU、その他の呼びかけを無視しました。従って、われわれは、総務省というひとつの組織が、公正な市場を確保するための規制を制定し、かつ、支配的事業者が支配的であり続けるという目標の達成に関係するという、極めて居心地の悪い状況の中に取り残されてしまったのです。われわれは、引き続き、日本政府に対して、電気通信分野における規制と経営の分離を、強く要望していきます。

 電気通信分野におけるわれわれの協議は、独占市場や、独占市場で起こるクモの巣のようにはりめぐらされた補助金制度から抜け出し、公正な競争へと向かおうとする日本政府自身の努力に貢献しました。2001年に、日本は、携帯電話事業者に対して非対称規制を導入しました。つまり、市場において支配的であるため、他の競争相手が何をするかに関係なく、一方的に行動することができる携帯電話事業者に対して競争を保証する追加的な措置が課せられることになったのです。NTTドコモが、支配的事業者として指定され、そしてこの非対称規制のもと、昨年ひとつの新しい有線事業者が、NTTドコモのネットワークに着信する通話料金について、NTTドコモではなくその事業者が、契約者への料金を設定する権利の申立てに成功したのです。この有線事業者は、現在、3分ごとの通話料金を以前より20円引下げています。われわれは、これが、固定から携帯という副次的市場において、より市場原理にもとづいたサービスに対する価格設定に向けた第1歩となることを期待しています。現在、日本における全通話の42%は、少なくともひとつの携帯電話を経由していることを考えると、これは重要な変化だと思われます。

 ITの分野においては、日本は、知的所有権(IPR)の保護を強化する方向へと進んでいます。この点については、日米双方に合意があり、また、新しいコンテンツ・プロバイダーが、日本が築き上げてきたブロードバンド・インターネットの能力の活用に魅力を感じるようにするために必要なステップです。小泉首相は、内閣府のなかにIP戦略本部を設置し、この組織と定期的に連絡をとりあい、意見交換をし、われわれのIPR体制が、急速に変化するインターネットの環境に足並みをそろえていけるように、共に働いています。

 私がお話ししたい最後の分野は、外国直接投資(FDI)です。その重要性については、不良債権についてお話しした際にすでに触れました。本年の1月31日に小泉首相がおこなった施政方針演説は、日本の将来に重要なかかわり合いを持つものです。その中で、小泉首相は、今後5年間で、FDI残高を2倍にすると公約しました。

 ここ数年、日本に対する外国投資は、急速に拡大していますが、その水準は他の先進国と比較すると、極端に低いものであり、日本の経済成長を甚だしく抑制してきました。FDIの拡大は、米国経済がこれまでに経験したことと同様に、日本に対して新しい生命の活力を与えるものです。

 今日の外国投資家は、世界の2つの経済大国の間で行われる技術およびノウハウの交易に結びつくビジネスの機会を探し求めています。私の友人である皆様、間違いなく、外国の投資家であろうと日本の投資家であろうと、投資家にとって、日本には多くの市場開拓の機会があります。日産に対する外国からの資本参加、そして日産の再建は、外国からの対日投資における成功例として、決して最後のものとなるわけではありません。

 しかし、極めて大きな投資案件を意味する以上のより大きな場があります。それは、活力に満ちた、拡大を続ける経済において、その鍵を握る中小企業のM&Aです。シスコ・システムズやマイクロソフトは、今日では国際的パワーとなりましたが、それは彼らがM&Aという手法を使い、最高の技術を獲得し、最も創造力のある人々を雇用し、新しい分野へ進出していったからです。

 日本には、優れた技術、労働者、アイデアを持つ、多くの中小企業が存在します。しかし、これらの企業は、成功するための資金力に欠けています。50年前に、ソニーはそれを成し遂げました。次はどの会社がそれを成し遂げるでしょうか?

 日本に対する外国からの直接投資は拡大はしていますが、その水準はいまだ低いままです。例えば、2000年における、日本のFDI残高は、GDPのわずか1.1%にすぎません。米国においては、12.5%、イギリスでは29%に達しています。米国に対するFDIは増加し、米国の競争力を高め続けています。より正確にいえば、過去10年間に米国に対して行われたFDIは、約3兆ドルに上ります。この額は、日本のGDPにほぼ匹敵するものです。このような額の資金の流入、そして投資にともなう技術や経営ノウハウの流入が、日本経済の再構築に、どれだけ大きく貢献するか想像してみてください。

 本日、私は、皆様に対して、日米経済関係の主要な部分について、ご説明をさせていただきました。日米間には違いもありますが、それぞれの制度や商慣行についてお互いに尊重し合っています。15年ほど前、東京のアメリカ大使館に初めて着任した際、私は、マイク・マンスフィールド大使のもとで働きました。当時、マンスフィールド大使は、常々、「世界の中で、日米2国間関係は、ほかに例を見ない、最も重要なものである」と言っていました。私は、この言葉は当時においても今日においても、まさに真実であると考えます。私は、現在、ハワード・ベーカーという、もう1人の偉大な大使のもとで働いています。ベーカー大使の口癖は、「アメリカと日本は、同盟国やパートナーであるばかりでなく、友達同士でもある」というものです。日本は、巨大な資産と有能な人材をもつ偉大な国です。

 福岡は貴重な歴史を持ち、大きな可能性を秘めていると私は思います。皆様の先人がそうしたように、九州が次の明治維新に向けて先頭に立って行動することを、私は楽しみにしています。この新しい明治維新は、世界経済において強力な競争者としての、新しい、より近代的な日本を創造するための戦いです。ご静聴ありがとうございました。