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世論調査、専門家、そして2004年選挙

ジョン・ゾグビー
1996年にサンディエゴ市で開かれた共和党大統領候補指名党大会で、ロバート・ドール上院議員を支持する代議員ら(Philip Jones Griffiths/Magnum Photos)

 多くの米国人は、政治に関する世論調査が好きである。また、世論調査を批判することが好きな米国人もいる。世論調査のファンは、選挙戦で誰が先頭に立っているのか、誰に当選のチャンスがあるのか、医療あるいは経済に関して最も人気のある意見を持っているのは誰か、といった政治のゲーム的要素を楽しむ。こうした「政治中毒」の人びとは、大統領、州知事、市長の実績評価に常に注目している。また、地域社会や国内の他の市民との連帯感を好む有権者も多い。オフィスの個室でも、長い通勤の車中でも、孤立した存在となっている人びとがますます増える中で、世論調査は国民に米国という社会の中で自分が相対的にどのような位置にあるかを教えてくれるのである。 

 世論調査という仕事については賛否両論がある。世論調査会社は、さまざまな論点や候補について、単に世論の動きを測定するだけでなく、有権者を操作し、影響を受けやすい公選の政治家に対して教祖的な支配力を持ち、最終的には選挙の結果として投票率に影響を及ぼしている、と非難されることも多い。しかし、私の世論調査専門家としての20年におよぶ経験から言うと、世論調査について声高に不満を述べる人ほど、最新の世論調査の結果をすらすらと引用できるものである。

 

上から: 1968年5月1日、シカゴ・トリビューン紙でジョンソン大統領の再選出馬断念の記事を読む男性。1968年4月、クリーブランド市のケース・ウェスタン・リザーブ大学の学生に演説をするユージーン・マッカーシー民主党大統領候補(c CORBIS; c Bettmann/CORBIS)

世論調査の歴史

 主要な世論調査機関が1つか2つしかない時代もあった。しかし今日、即時ニュース、インターネット、そして24時間ケーブル・ニュース局の時代にあっては、さまざまな組織が実施する委託・非委託の世論調査が、ニュースの穴を埋めるために使われることが多い。 

 世論調査の第1号は、1824年にペンシルベニア州ハリスバーグ市の地方紙が行った調査であった。政治運動の報道に独立機関による世論調査の結果が頻繁に登場するようになったのは、1930年代のことである。最も初期の、最も優れた近代的世論調査は、ギャラップ、ローパーといった著名機関によって行われ、後に、シンドリンガー、ヤンケロビッチ、ハリスなど米国の家庭ではおなじみの名前がこれに加わった。また、1970年代までには、米国の3大テレビネットワークのニュース部門が、大統領選で独自の世論調査を行うようになり、その後まもなく、各州の州知事や連邦議員の重要な選挙についても世論調査を行うようになった。 

 マスコミによる世論調査、すなわちCBSとニューヨーク・タイムズ、ABCとワシントン・ポスト、NBCとウォール・ストリート・ジャーナルなど、ニュース・ネットワークと新聞社が共同で行う世論調査は、候補や政党のために行われる非公開の世論調査とはさまざまな面で異なっており、政治プロセスにおいて重要な位置を占めるようになっている。主な相違点は、マスコミによる世論調査は公開されており、どの候補者が選挙戦で先頭に立っているかを有権者に知らせることを主目的としていることである。これらの調査は、中立性と独立性を目指している。こうした客観性は、各候補がそれぞれの「非公開の」調査結果を偽ることを防ぐという意味で、特に重要である。例えば、以前は、一般的にあまり人気がないと思われる候補が、自分の非公開の世論調査では先頭に立っていると主張することができた。この数十年間に、独立調査機関による世論調査は、選挙戦を客観的に観察し、各候補の長所と短所を評価し、各候補の支持層の構成を調査する役割を果たしてきた。このような独立した調査は、記者や編集者が選挙戦の現状を公正に評価し報道することを可能にする。 

 独立機関による調査のこうした透明性は、読者や視聴者に有用なサービスを提供している。しかし、このような世論調査にも問題が発生する場合がある。1996年の大統領選で、共和党のボブ・ドール元上院院内総務が、民主党のビル・クリントン現職大統領に対抗して立候補した。ほとんどの世論調査が、選挙期間を通じてドール候補が最高25ポイントの差で遅れを取っているという結果を示す中で、当社<ゾグビー・インターナショナル>がロイターの委託で実施した調査の結果は、7〜12ポイントの差という、はるかに接近した争いを示していた。しかしながら、この1996年の選挙戦では、他の世論調査機関がネットワークや主要紙のために行った調査の結果がマスコミ報道の中心になった。従って、明けても暮れても、ドール候補はクリントン大統領に「最高25ポイントもの」差をつけられて「大きく遅れを取っている」と報道された。極端な調査結果だけが選挙戦報道の根拠とされた場合、報道に深刻な歪曲が生じ、結果を示唆し、最終的には自己達成的予言となる可能性がある。また、候補者にとっては、資金を集めたり、意見に公平に耳を傾けてもらったりすることが難しくなる。 

 これは、選挙前の世論調査が、実際に投票率ないし投票結果、あるいはその双方に影響を及ぼすことを意味するのだろうか。一般には、簡単に言えば答えは「ノー」である。ドール対クリントンの選挙戦報道が、ドール上院議員にとって深刻な問題となったことは事実であるが、ドール候補が勝利することができたであろうことを示す確実な証拠はない。また、これまでに、選挙前の世論調査で、苦戦していることが示されたために落選した候補がいることを証明する明確な証拠もない。 

 しかし、今日では世論調査が氾濫し、「世論調査公害」をもたらしている、という意見もある。先に、24時間ケーブル・ニュース・ネットワークがニュースの穴を埋める必要性について触れたが、これが政治世論調査の急増の一因となっている。報道機関同士の激しい競争が要因の1つであることも確かである。2000年の選挙期間中には、少なくとも14の主な独立調査機関による世論調査が行われ、その結果は必ずしも一致していなかった。しかし、有権者が不満を持つ必要はない。選択の余地は存在しており、有権者は世論調査に対しても、車や家を買うときと同様に、賢い消費者とならなければならない。世論調査にはいくつかの基本的な規則がある。世論調査の最も賢明な読み方のガイドを、以下に紹介する。

 

サンプル数と許容誤差

2000年8月17日、ロサンゼルス市で開催された民主党大会で、自社のウェブサイトの作業をする報道機関の社員(Getty Images)

 大統領一般教書演説や選挙の候補者討論会のような主要イベントの後、その晩のうちに世論調査が行われることがある。こうした調査では、全国で500人という限られた数の成人を対象に一晩で調査を行い、翌日直ちに結果を発表することが多い。このような「一夜調査」は一般市民の反応を迅速にとらえられるかもしれないが、専門家から見ると、こうした調査には欠陥がある。

 まず、人口2億8000万人の国で、わずか500人というサンプル数は、真剣に取り上げるには小さ過ぎる。その精度は95%プラスマイナス4.5%かもしれないが、大統領選あるいは主要な州選挙においては、それでは不十分である。また、私の考えでは、500人というサンプル数は、全国選挙や主な州選挙の分析に必要な、統計的に有意なサブグループ分析を行うには不十分である。

 ほかの方法論上の問題もある。一晩のサンプルを対象とする場合、国民を幅広く代表する人々が在宅していない可能性がある。世論調査会社は、人口構成をより正確に反映するためサンプルに加重するが、サンプルとして不十分なグループを加重で補正できるとは限らない。例えば、ある晩の「一夜調査」では、アフリカ系米国人のサンプルが少なくなるかもしれない。また別の晩には、ネブラスカ州あるいはカンザス州のアフリカ系米国人のサンプルが多過ぎる一方、ニューヨーク、ミシシッピまたはサウスカロライナ州のアフリカ系米国人のサンプルが不足するかもしれない。

 急いで実施される世論調査のもうひとつの問題点は、調査対象が「投票する可能性の高い有権者」ではなく「成人」であることが多い点である。この2つのグループの人口統計的な構成はかなり異なる可能性がある。一般に、成人というグループには、少数民族、低所得世帯の人々、および労働組合員がより多く含まれる。これらの人々は、いずれも民主党とその候補を支持する傾向があるため、世論調査のサンプルにこうした人々が多く含まれていれば、結果が偏る可能性がある。

 従って、世論調査のサンプル数と、その構成には注意しなければならない。米国における優れた全国調査は、少なくとも1000人の「投票する可能性の高い有権者」を調査対象としており、許容誤差はプラスマイナス3ポイント以内である。

 

勝利が勝利とはならない場合

 いかに完璧に行われた世論調査でも、「モナリザ」や優れた小説のように、異なる解釈が可能である。また、世論調査はそれを読む記者や専門家に、一定の予測を示す。こうして、世論調査機関と専門家は、「一般通念」と呼ばれる、とらえどころのない概念を作り出す。そして、両者とも、候補者がこの一般通念を破ることを歓迎する。過去に、選挙戦序盤の世論調査の結果が示す動向に反して、「群れ」から抜け出してトップに立った候補者は多い。 

 その一例が、1968年に、ベトナム戦争反対を唱え、リンドン・ジョンソン大統領に対抗したユージーン・マッカーシー上院議員である。米国内で反戦気運が高まってはいたものの、知名度の低いミネソタ州の上院議員が、強力なジョンソン大統領にまともに挑戦できるとは誰も考えなかった。しかしながら、最初の予備選挙(ニューハンプシャー州)の票が集計されると、ジョンソンの49%に対してマッカーシーが41%の票を獲得したことが明らかになった。ジョンソン大統領の名前が投票用紙には記されておらず、ジョンソン大統領に投票する者はその名前を記入しなければならなかったという事情があったにもかかわらず、専門家は、マッカーシーの得票率が選挙前の世論調査に基づく予想をはるかに上回っていたため、マッカーシーの勝利を宣言した。マッカーシーの「勝利」は政界を驚かせ、この予備選から2週間たたないうちに、ジョンソン大統領は再選出馬を断念した。 

 1972年の民主党のニューハンプシャー州予備選も、専門家が「勝利」を宣言した例である。1968年に短期間であるが反戦活動に従事し、その後民主党内の改革運動を主導したサウスダコタ州選出のジョージ・マクガバン上院議員が、大統領候補指名の最有力候補であったエドムンド・マスキー上院議員に挑戦した。マクガバン候補の私的な世論調査によると、同候補はニューハンプシャー州予備選で40%以上の票を獲得する可能性があった。そこで、賢明なマクガバンは、マスコミに対して、35%の票が得られれば満足である、と語った。予備選で、マスキーの48%に対して、マクガバンが43%を獲得すると、マスコミは(1968年と同様に)、専門家の予想を上回った挑戦者が「勝利」した、と主張した。1968年の場合と同様、この「勝利」はマクガバンに、ニューハンプシャー州での勝利がもたらす最大の恩恵と歴史家たちが言う、マスコミの報道、資金、そして勢いをもたらした。その後、マクガバンは民主党の大統領候補指名を勝ち取ったが、一般選挙ではリチャード・ニクソンに大敗した。 

 1976年には、元ジョージア州知事のジミー・カーター候補が、当初はワシントンの記者団から、「ジミーって誰?」と言われるほど知名度が低かったが、ニューハンプシャー州予備選で、より知名度の高い民主党候補5人を相手に28%の票を得ることによって先頭に踊り出て、最終的には指名を勝ち取った。 

 以上の例から得られる教訓は、選挙前の世論調査を利用して、トップランナーの地位を強化することも、揺るがすこともできる、ということである。世論調査は、選挙戦報道の基準を確立するとともに、勝利の予想について一般通念を作り出すことができるのである。

 

左から: 2000年大統領選のアル・ゴア、ジョージ・W・ブッシュ両候補による初のテレビ討論会を見るために集まったテキサス州の共和党員。ロサンゼルス市で、予備選挙に投票した後、出口調査用紙に記入する女性 (Bob Daemmrich/The Image Works)

出口調査

 米国では1970年代以降、出口調査は全国および州の選挙において欠かせないものである。同時に、投票を終えたばかりの人びとを調査対象とすることによって、投票所の外で選挙結果を予想しようとする出口調査は、今日行われている各種調査の中でも、おそらく最も論議の対象となることが多い。特に2000年の大統領選挙では出口調査の悪名が高まった。テレビ局が出口調査を使い、フロリダ州での勝者を1度ならず2度までも誤って予想したためである。 

 しかしながら、出口調査は、正しく使用されれば、世論調査会社、報道関係者、そして学者にとって、極めて重要な手段となる。出口調査は、投票日の晩の早期に勝者を予測するという用途に加えて、専門家や政治学者に、人口統計上の特定のグループがどのように投票したか、およびその理由について、詳しいデータを提供する。また、世論調査会社にとっては、今後の選挙における投票率モデルの作成、すなわち人口統計上の各グループの投票率の予想に役立つ。これは、政策目的の調査において、適切な有権者サンプルを確保するために不可欠な要素である。 

上から:大統領選挙運動中、テレビのトーク番組「ハードボール・ウィズ・クリス・マシューズ(Hardball with Chris Matthews)」に出演するジョージ・W・ブッシュ候補。テレビのトーク番組「ミート・ザ・プレス(Meet the Press)」に出演中のジョージ・W・ブッシュ(c Brooks Kraft/CORBIS; Courtesy Meet The Press)

 しかしながら、出口調査が当選者の予想に使われると、問題が生じやすい。出口調査のサンプリング手法がいかに優れていても、サンプリングであることに変わりはなく、従ってサンプリング誤差がある。これは、選挙結果が大差である場合にはあまり問題にならないが、接戦の場合は1〜2ポイントの誤差が大きな意味を持つ。2000年の大統領選では、選挙前の世論調査と、投票日を通じて行われた出口調査の結果からは、テレビ局がジョージ・W・ブッシュとアル・ゴアのどちらがフロリダ州で勝ったのかを、集計がすべて終わる前に判断することは、とうてい不可能であった。しかし、最初に予想を発表することへのプレッシャーが、正しい予想を発表するためのプレッシャーを上回ったのである。 

 世論調査の専門家がこのような見方をすることは奇妙に思えるかもしれないが、私は2000年11月の出口調査の破綻は、良い教訓となったと考える。実際の選挙結果が出る前に誰が当選したかを知る必要はない。投票日の晩には、誰が投票したのか、そしてなぜそのように投票したのかを知るために出口調査を利用する方が、選挙プロセスにとっては有益である。

 

世論調査業界は危機を迎えているのか

  最近は、世論調査に対する回答率の低下が話題になっている。私が世論調査の仕事を始めた頃は、平均回答率が65%であった。すなわち、電話による調査対象の3人に2人が回答に同意した。今日では平均回答率が30%前後であり、一部の都市圏ではこれよりはるかに低い。このため、世論調査はもはや有効ではないとの結論を出そうとしている専門家もいる。しかし、それは事実からはほど遠い。回答率の低下によって調査の実施に時間がかかるようになってはいるが、それでも有効なサンプルを確保することは可能である。当社を含め、一部の世論調査会社が、主要選挙の結果予想を誤ったことが大きく取り上げられているが、実際には、どの世論調査会社も、概してサンプリング誤差の許容範囲内で結果を予想している。2004年に再び主要な選挙を迎えるに当たって、世論調査ができること、できないことについて期待し過ぎず、政治情報の消費者として健全な疑いを抱くことが、最良のアプローチであると思う。

 

ジョン・ゾグビー(John Zogby)は、1984年に自ら設立した世論調査会社ゾグビー・インターナショナル社の社長兼最高経営責任者。同社は、ロイター、NBCテレビなどマスメディアの委託で世論調査を行っている。著書に、Decision 2002: Why the Republicans Gained がある。ゾグビーの詳しい経歴は、http://www.zogby.comに掲載されている。

* 本稿はUnited States Elections 2004 に掲載の"The Polls, the Pundits, & the Elections of 2004" の仮訳です。