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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

ライス国務長官の上智大学における講演

東京

2005年3月19日

ライス国務長官 どうもありがとうございます。カリー神父様、本日はお招きいただきましてありがとうございます。また、特に渡辺(亜紀子)さんにもお礼を申し上げます。渡辺さんとお話をしていて、バークレーで1年間学ばれたことを知りました。ご存じのようにバークレーはスタンフォードからは湾を挟んだ向かい側にあります。この2校は強力なライバル関係にあります。渡辺さん、今度米国にいらっしゃるときは、ぜひスタンフォードに留学されるよう願っております。

 学問の世界における偉大な光であり、米国と日本の強力なパートナーシップの生きた手本である上智大学を訪れることができ光栄に思います。上智大学の指導者、理事、教職員、学生の皆様、本日は温かく歓迎していただき、また皆様にお話をする栄誉を与えていただき、ありがとうございます。

 私はこれまでに何度も日本を訪れております。しかし中でも最も思い出深いのは、1986年に3週間にわたって横須賀の防衛大学校で客員教授を務めたときのことです。ご存じのとおり、横須賀は小泉首相の地元であり、首相とはそのことを何度も話し合う機会がありました。そして、当時お会いした素晴らしい、熱心な幹部候補生の多くは、今、日本と世界で平和と自由の拡大に貢献されていることと確信しております。その3週間、横須賀は私にとって素晴らしい第2の故郷でした。いつかまた横須賀を訪れることを楽しみにしています。

 私は今、この比類のないパートナーシップが大きな期待と再生の時期を迎えているときに、再び日本を訪れています。米国と日本は、共に多くのことを成し遂げてきました。そして、今後もさらに多くを達成するでしょう。従って、私は、本日の小泉首相や町村外務大臣をはじめとする方々との会談に期待しております。

 ところで、私は学者であることが宣伝されていると思いますが、ご存じのように学者には2つの選択肢があります。ひとつは、誰も聞きたくないような話を長々と続けること、もうひとつは自由で開放的な対話を行うことです。私は、後者をとりたいと思いますので、このスピーチも簡潔にすることを心がけます。率直で知的な対話の場として、ここ上智大学に勝る場所はないと思います。

 本日、私たちの対話を始めるに当たり、まず日米パートナーシップの成功の理由、そして東アジア全体の成功の理由についてお話ししたいと思います。

 過去半世紀間の日本の成功、すなわち過酷な戦争の焼け跡から立ち上がり、世界的な繁栄と責任と地位を達成するに至った日本の成功は、歴史に残る偉業であり、他を勇気づけるものです。日本の業績は転換をもたらしており、その対象は日本だけではありません。日本は、東アジア全体の政治的・経済的前進の手本を示し、韓国、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、東ティモール、そしてモンゴルなどの成功の基盤を築くことに貢献しました。日本は真に、その先頭に立ってきました。

 米国は、日本の成功だけでなく、東アジアの成功にも関与してきたことを誇りとしています。米国は、米軍の存在、米国経済の開放性、そしてアジアにおける多くの自由のパイオニアに対する激励と支援を通じて、東アジアの前進を保護し、奨励してきました。

 私たちが多くを達成することができたのは、相互の成功を基盤に前進してきたからです。私たちは、新たなパートナーシップ、新たなプロジェクト、新たなアイデア、そして新たな地平線を受け入れてきました。そして何よりも、太平洋を国家間の障壁ではなく橋とすることによって、太平洋地域社会として結束してきました。

 米国は太平洋地域の国家であり、私たちは皆、協力することによって繁栄することができます。私たちが太平洋地域社会を築いたために、今日、東アジア、そしてアジア全体が、単に世界的な好ましい動向の対象となるだけでなく、受身の受益者、つまり他者の成功による受身の受益者ではなく、こうした好ましい動向を形づくる重要な存在となっています。

 私が、国務長官に就任してから早い時期にアジアを訪れているのは、私たちには、世界の動向を平和と繁栄と民主主義に向けて前進させる、またとない機会が与えられている、と信じているからです。私たちの進む道を遮るものはありません。私たちは、国民全員に、より多くの安全保障を提供しなければなりません。世界中の人々に、より大きな機会を提供しなければなりません。そして、太平洋地域と世界全体の自由を拡大させる努力を続けなければなりません。

 この安全保障、機会、自由という3つの目標は、相互につながっています。安全保障は、機会がもたらす繁栄を保護します。一方、安全保障と繁栄は、人間の創造性を発揮させるものですが、人間の創造性は、自由の下でなければ十分に発揮されません。

 まず安全保障の問題を取り上げてみましょう。今日、太平洋地域の安全保障は成功しています。アジアでは、過去30年間以上、大きな紛争はひとつも発生していません。そして、米国と日本の同盟における共同作業は、多くの分野で前進しています。

 日本は、長年にわたり、地域の安全保障に重要な役割を果たしてきましたが、現在では、テロとの国際的な戦いにおいて、また中東において、そして問題を抱えた中東地域の改革と和平の探求において、主要なパートナーとなっています。地域的にも世界的にも、日米同盟は近代化されており、直近の例としては、日米の共通戦略目標が合意されています。

 また日本の国民はイラクに寛大な人道援助を提供し、イラクの選挙の成功に重要な貢献をしました。そして日本は、勇敢な自衛隊をサマワに派遣しています。

 日本は、アフガニスタンの選挙の成功や、カンダハルとヘラトを結ぶ道路の建設にも極めて重要な役割を果たし、またケシ栽培に代わる生計手段の開発を援助しました。私は本日これから、イラクにおいて、また津波被災者救援活動において素晴らしい活躍をされた日本の自衛隊の皆さんに直接お礼を申し上げる機会を与えられております。

 要するに日本は、より広範な国際的責任を負担してきました。 私たちはこれを歓迎しています。日本が自由の推進を主導することは、太平洋地域にとって、また世界にとって好ましいことです。

 同様に、私たちの同盟国である韓国も、この地域の安全保障と福利に不可欠なパートナーであり、また世界的なパートナーともなりつつあります。韓国は相当数の兵士をイラクに派遣するとともに、アフガニスタンでは地方復興チームのひとつの指揮をとる責任を負ってきました。

 米国、日本、そして韓国が、力を合わせて平和と安全保障を支援し、共通の価値観を促進すれば、アジアと世界は、より良く、より安全になります。

 オーストラリアは、今日まで、1世紀以上にわたって米国と密接な関係にあります。自由な男女が良識と民主主義を支持するところには、必ずオーストラリアの存在があります。また私たちは、米国とフィリピンおよびタイとの同盟、そしてシンガポールとの協力の拡大にも深く感謝しています。

 私はインドを訪問してから日本に来ました。インドでは、ブッシュ大統領の代理として、インドが世界有数の偉大な多民族民主主義国家としての目標を達成することを援助するための、これまでより極めて広範な戦略的関係のビジョンを提示しました。このビジョンは、平和のための国際戦略、防衛、エネルギー、そして経済成長における協力を包含するものです。

 私たちのアジア太平洋地域社会は大きな業績を達成してきました。しかし、私たちの集団安全保障そしてアジアの安全保障には重要な課題が残っています。何よりも、テロの惨禍に対しては、すべての国家による断固たる対処の確約が必要です。バリやジャカルタの爆弾テロから、フィリピンにおける誘拐事件、そして言うまでもなく、つい何年か前に東京で発生した地下鉄テロ事件まで、アジアはテロの卑劣な顔を見てきました。

 パキスタンから日本まで、アジアのどの国家も、テロのない世界の保証という私たちの共通の関心事を理解しています。また、アジアのほぼどの国家も、そうした世界の実現のために、それぞれの役割を果たす意志を表しています。

 北朝鮮の核兵器開発の野心も、私たちの安全保障を脅かしています。6者協議は、この問題に対処する最良の枠組みを提供するものです。これは、北朝鮮政府が戦略的な選択をする意志があるなら、同国政府の欲する尊敬を得るとともに、同国が必要とする援助をも獲得できる機会です。

 誰も、北朝鮮が主権国家であることを否定してはいません。私たちは、北朝鮮を攻撃する意志はないことを繰り返し述べてきました。6者協議の他の参加国とともに、私たちは、北朝鮮の核開発計画廃止という枠組み内で北朝鮮に多国間安全保障を確約する準備ができています。私たちは、北朝鮮のエネルギー・ニーズを検討することを提案しました。北朝鮮もこうしたことをすべて承知しています。

 しかし、米国およびその他の民主主義社会は、北朝鮮の国民の窮状について、北朝鮮政権の性質について、また北朝鮮政権が平和な近隣諸国の罪のない市民を拉致したことについて、そして核武装した北朝鮮が地域全体にもたらす脅威について、黙ってはいません。

 はっきりと申し上げます。北朝鮮は、私たちや他の当事国が提案した前進の道を真剣に探索する意志があるならば、直ちに6者協議に復帰すべきです。

 中国が6者協議で重要な役割を果たしてきたことは確かです。ブッシュ大統領と胡錦涛国家主席は、朝鮮半島における核兵器の存在を受容することはできないとの合意に達しています。私たちは、この目標を目指して、外交面で一致協力しています。しかし北朝鮮は、近隣諸国の要請を拒否しており、そうした拒絶に直面して、当事国はいずれも北朝鮮に対して、戦略的決断の時が来ていることを説得する努力を強化しなければなりません。

 これに関して、中国には特に重要な機会と責任があります。私はまもなく中国政府関係者と会談し、米国と中国がこの問題だけでなく他の課題についても共通の利益を促進する手段について話し合う予定です。

 私たちは、中国がアフガニスタンの民主主義政府を支持していることを歓迎しています。また、中国が南アジアの安定を確保しようとしていること、そして私たちの海上コンテナ安全対策への参加をはじめ、テロとの国際的な戦いを支持していることを高く評価しています。さらに、その他の課題についても中国と協力すること、スーダン、ビルマ、ネパールにおける課題に対する共通のアプローチを築く努力をすることに期待しています。

 従って、明らかに米国には、自信に満ちた、平和な、繁栄する中国の台頭を歓迎する理由があります。私たちは、中国が、その成長する能力に見合った国際的責務を引き受ける能力と意志を持つ世界的なパートナーとなることを望んでいます。

 言うまでもなく、中国との協力を難しくする問題がいくつかあり、その最たるものが台湾問題です。米国の「1つの中国」政策は明確であり、この政策に変更はありません。 私たちは、いずれの当事者の言葉によっても行動によっても、現状を一方的に変えることには反対します。この問題をどちらかが単独で解決することはできないという事実を、双方ともに認識しなければなりません。私たちは、双方が、より生産的な関係に向けた最近の措置の拡大を続けることを促します。そして、平和と安定のために、私たちは、台湾関係法に基づく義務を順守します。

 この太平洋地域社会で、私たちは、基本的な安全保障を約束し、より大きな機会と自由という、その他の目標の達成を目指すことができます。

 私たちにそれができるのは、そのための有効な手段を知っているからです。それは、経済の開放性、政治の開放性、そして開放性の効果を強化するグローバル・スタンダード(国際基準)の重視です。経済の開放性は、国民の大望と繁栄を支持し、政治の開放性と自由に対する国民の熱意を倍化させます。最終的には、社会の物質的な福利を、その政治的美徳から切り離すことはできません。

 太平洋地域における私たちの繁栄は、最良の経済慣行に対する理解の促進、そして信頼にかかっています。しかし、時には貿易紛争が発生します。言うまでもなく、その最近の例が、日本による米国産牛肉製品の輸入の問題です。

 この問題を解決すべき時が来ています。米国産牛肉は安全であること、そして米国は世界の人々、米国の人々、そして日本の人々のための食品の安全性を極めて重要視していることを、私は断言します。この問題に関する科学のグローバル・スタンダードが存在します。私たちは、「例外主義」によって、私たちがより大きな繁栄の共有に向けて投資と貿易を行う能力を危機にさらしてはなりません。

 私は次のことを保証します。米国は現在も、経済成長のための私たちの共通アジェンダを全面的に支持しています。私たちは、補完的な2国間、地域、および国際交渉を通じて、太平洋地域全体で、より広範な通商を積極的に追求しています。

 太平洋地域社会の構成国は、経済の活気と発展のカギとなる科学技術におけるパートナーとしても先駆的な存在です。ナノテクノロジーやバイオテクノロジーからロボット工学、そして有望なエネルギー関連の研究開発プロジェクトまで、私たちは、世界の経済を変える新しい技術の最先端にいます。

 しかし、革新は経済を前進させますが、公正さの欠如は前進を妨げます。 米国の企業は、海賊版製品や偽造品によって年間2000億〜2500億ドルの損失を被っています。革新は経済成長を刺激しますが、知的財産権の適切な保護がなければ、革新は損なわれます。日本と米国は、知的財産権に関する協力で優れた実績を上げています。私は、その協力の実績を、アジアのすべての国家の模範となるものとして推奨します。

 それと同時に、感染症の脅威の拡大に対して私たちが行動をとらない限り、21世紀における真に持続可能な繁栄は不可能です。そうした危険性について、アジアの人々に説明する必要はないでしょう。SARSの流行、増大する鳥インフルエンザの脅威、HIV・エイズのまん延、そして、薬に対する抵抗力を持つ結核菌などが、私たち全員に対する脅威となっています。私たちは、公衆衛生に対する主な脅威を世界的に監視し追跡する努力を、これまで以上に強化し、そうした脅威に終止符を打たなければなりません。太平洋地域は、こうした努力の主要な柱とならなければなりません。

 そして、もちろん、私たちは、援助を必要とする近隣諸国に効果的に対応する能力を向上させなければなりません。それも、太平洋地域の繁栄と平和のインフラの一部なのです。

 アジアの人々が米国の援助を必要とするとき、私たちは常にその要請に応えてきました。つい最近も、インド洋の津波で大被害を受けたアジアの人々に、米国は援助を提供しました。しかし、今回そうした要請に応えたのは米国だけではありませんでした。米国と日本は、オーストラリア、インドと共に、中核的なグループを迅速に形成し、救命のための兵站活動を組織し、国際的な救援活動を先導しました。

 この前例のない悲劇に直面して、太平洋地域社会の民主主義諸国は力を合わせ、前例のない創造性と寛大さをもって対応しました。そしてそれは、各国の政府に限られたことではなく、各国の国民も反応しました。日本は今もその活動の先頭に立ち、最近では、インド洋における有効な津波警報システムの構築を推進するための重要な国連会議を主催しました。

 米国と日本は、共にさらに多くを成し遂げることができます。日米の同盟は、安全保障と安定のためだけのものではありません。この同盟は、思いやりの同盟でもあります。

 私たちは、それぞれの責任を負担する意志のある政府と提携し、経済機会を重視した人間開発を支援します。日米両国は、全世界の開発途上国に対する政府援助のおよそ40%を提供しています。

 そこで私は本日、日米の「戦略的開発同盟」を提案します。これは、日米両国が定期的に会合し、アフリカなど、世界各地で両国がすでに協力して活動している諸国で、これらの共通目標を推進する努力を組織的に集中させるための同盟です。また、私たちは、この作業に有用な貢献をすることのできる他の諸国の参加も歓迎すべきです。

 日米の共同作業はすべて、この両国の共通の熱意、自由への献身から生じる思いやりと尊厳によって、活気を与えられています。ブッシュ大統領は、米国の外交政策の使命は、他の諸国と協力して、自由に有利な力の均衡を築くことである、と定義しています。私たちは、この作業において、アジア諸国は強固なパートナーであると信じています。それは、過去50年間、アジアでは、自由な精神と自由な市場の台頭が、優勢な政治的展開となっているからです。

 アジア諸国は、自由が、人間の精神の真に普遍的な特質であることを、明白に証明しました。アジア諸国の自由は、アジア社会の文化の下で達成されたものであり、自らの深い哲学的・道徳的信念から生まれたものです。

 しかし、次の点を考えてみてください。民主主義は、仏教が優勢なタイで、イスラム教が優勢なインドネシアで、またカトリックが優勢なフィリピンで台頭しています。民主主義は、日本のような立憲君主国で、またモンゴルのような旧共産主義国家で機能しています。民主主義は、韓国のように均質な社会で繁栄するとともに、マレーシアのような多民族国家にも存在します。従って、特にビルマをはじめとするこの地域で、民主主義がさらに拡張を続けることが不可能であると考える理由はありません。

 とはいえ、私たちが、より自由な地域、より自由な世界を築く上で、多くの課題に直面していることは明らかです。

 アジアの民主主義国家の多くはまだ若く、脆弱なものもあります。太平洋地域における、より歴史のある、制度化された民主主義国家にとっては、新興民主主義諸国を援助し、その成功を強化することが、極めて重要な利益となります。

 しかし、現代の動向の最終的な進路は明らかです。成功を導くのは開放性です。私たちは、経済的開放性と政治的開放性を長期にわたって切り離しておくことは不可能であることを見てきました。中国でさえも、グローバル化する世界の課題に挑戦し、その利益を享受するためには、いずれは何らかの形で、開放された、真の代議政体を取り入れなければなりません。

 中国の指導層が、自国の政治体制を経済的開放性の強化に合わせる必要性に直面したとき、彼らはアジアの近隣諸国を見渡し、自由が機能していることを認識する、と私たちが確信しているのは、そのためです。彼らは、民主主義が機能していることを認識します。そして、信教の自由と人権の尊重が、優れた社会の成功の基盤を構成するひとつの要素であることを認識します。

 従って、21世紀のアジアは、過去1世紀間のように、軍事力によって定義されることはありません。そうではなく、思考が、すなわち自由の思考が21世紀のアジアを定義することになるでしょう。

 アジアと太平洋地域社会の将来を定義する2つの大きなテーマは、開放性と選択です。私たちは、閉鎖された社会や経済、そして影響力の勢力圏ではなく、開放された世界を支持します。排他的な強国の集団ではなく、万人に開放された地域社会を支持します。

 しかし、国家が選択をしなければなりません。そのような開放された地域社会の一部となり、それに伴う責任の負担を受け入れるかどうかを選択しなければなりません。

 米国と日本は、すでにその選択をしており、米国にとって、民主主義の日本を友人とすることは光栄なことです。日本は、自らの努力と、自らの特質によって、世界各国の中でも栄誉ある地位を勝ち取ってきました。そのため米国は、日本が国連安全保障理事会の常任理事国となることを明確に支持しています。

 ブッシュ大統領は、小泉首相とテーブルを挟んで座ったときの気持ちを語ることがよくあります。私は、大統領が選挙運動中に、アイオワ州デモインからフロリダ州マイアミ、そしてオレゴン州ポートランドまで、全米各地で、その話をするのを聞きました。大統領は、日本が第2次大戦後に、強く、安定した国としてだけでなく、民主的で自由な国として台頭するために実行された、困難な選択や犠牲について語っています。そして今日、単なる盟友ではなく、日本の民主主義の盟友とテーブルを挟んで座ることの意義を語っています。大統領は、北朝鮮やイラクやアフガニスタンの問題、あるいは疾病や貧困との闘いなど、継続する世界的な課題を解決するために、小泉首相のような民主主義の指導者や日本の国民と協力することによって得られる力について語っています。そして、それによって大統領が受ける刺激について語っています。

 それは、いつの日か、米国の大統領と日本の総理大臣が、イラク、アフガニスタン、そしてパレスチナの民主的な盟友と、テーブルを挟んで座ることになるからです。彼らも、私たちの子どもたち、また世界中の子どもたちの、より良い未来を描くことになります。彼らは、それを、民主主義の価値観に基づいて行うことになります。それは、民主主義の価値観、そして解放と自由に対する共通の献身から生まれる友好ほど強いものはないからです。どうもありがとうございました。

 ご質問にお答えする約束をしていたのに、帰ってしまうところでした。では、ご質問にお答えしましょう。前列の女性の方、どうぞ。

 ライス長官、発言の機会を与えていただき、どうもありがとうございます。私は、ヤマモト・タシリと申します。上智大学3年生です。私の質問は次のとおりです。冷戦の終結からすでに15年がたち、在日米軍の戦略的役割は大きく変わったと思います。アジアおよび中東の現状を考慮すると、沖縄に大規模な米軍の存在を維持することには、どのような理由があるのでしょうか。

ライス長官 どうもありがとうございます。ご質問は、冷戦の終結から15年がたった現在の、沖縄の在日米軍に関するものです。私はまず第1に、在日米軍の存在は、引き続き、地域全体の平和と安定の実現のための存在であること、そしてその傘の下でアジアが変遷と変化を続けていることを強調したいと思います。

 アジアは、中国国内の発展や、東南アジア諸国の国内の発展という点から、今も非常に動的な地域です。そして、言うまでもなく、中国の台頭は、国際政治における真に新しい要因のひとつです。従って米国は、こうした動きが平和裏に進行できるようにするために、安全保障面で安定効果を持つ日米関係を維持することを望んでいる、と私は考えます。

 ところで、この関係も変化しつつあります。現在、防衛再編の協議が続いています。私たちには、在日米軍の存在を、日本における米軍の現状に合ったものとし、日本国民にもより受容しやすい存在に変える方法を話し合う意志が十分にあります。また言うまでもなく、日米同盟、すなわち軍事同盟だけでなく広範な日米同盟、が刺激となって、日本が、例えばイラクで自衛隊が行っているような人道支援活動で世界的な役割を果たしていることは、米国にとって大変喜ばしいことです。

 従って、これはもちろん更新の必要のある同盟関係です。 私は最近、わずか1カ月足らず前に、ワシントンで、日本の外務大臣と防衛庁長官、米国のラムズフェルド国防長官との協議を行い、今後の共通戦略目標について、また日米同盟の近代化について話し合いました。日米同盟は、いまや古い防衛同盟ですが、その将来は非常に明るいと私は考えます。

 それでは、こちらのお2人と、それからそちらのお2人のご質問にお答えします。こちらの方、どうぞ。

 素晴らしいお話をどうもありがとうございました。大変感銘を受けました。どうもありがとうございます。私は、上智大学比較文化学部のオークマ・ヒラキと申します。それではご質問させていただきます。率直に言って、日本と近隣諸国との関係はあまり良好ではないと思われます。また、北米やヨーロッパ諸国との関係とはかなり異なっています。そこで質問ですが、長官が日本の総理大臣だったとしたら・・・この問題をどのように解決されますか。

ライス長官 これは大変ですね。これから首相とお会いすることになっているので、その前にこの問題を考えておかなければなりませんね。

 私たちは、日本と近隣諸国の間に多少の難題があることを認識している、と申し上げておきましょう。私は、日本と韓国の間に解決すべき問題があり、特に最近大きな話題となっていることを承知しています。私自身、長年にわたってソ連、そしてロシアを専門に研究していました。ロシアとの間に解決すべき領土問題が残っていることも知っています。そして、これはロシアとの間で解決されるべき問題であることも申し上げておきます。米国は長年にわたりその解決策を支持してきました。また、中国との間に課題があることも承知しています。

 これは、最初のご質問に対する私の答えにも多少関係してきます。 アジアは、いまだに第2次世界大戦の後遺症から抜け出そうとしているとともに、19世紀まで歴史をさかのぼって、安全保障上の紛争や国境紛争が残っている地域ですが、アジアが地域としての経済統合と政治的な接触を強化していくに伴い、こうした問題の一部は解決しやすくなるでしょう。しかし、米国の存在によるひとつの意義、ひとつの役割として、そうした解決策が実行されやすい、安定した環境を提供することがあげられます。

 ところで、ヨーロッパにも、これまでに極めて強力な各種機関が存在しました。欧州連合は、ヨーロッパにおける長年の対立の一部を克服することに貢献してきた、民主主義国家の連合です。また、北大西洋条約機構(NATO)は、民主主義国家が相互の意見の相違を乗り越えることに貢献してきた同盟です。

 私は、そのような機関がアジアで発生する、と言うつもりはありません。しかし、そこから得られる教訓は、国家同士がすべてのアジェンダについて前向きな話し合いを開始するならば、19世紀、そして20世紀初め以来の長年にわたる国境紛争の重要性と顕著性がある程度失われる、ということです。

 これは、本日のスピーチで申し上げた、21世紀は軍事力の時代ではなくなる、という点が意味することの一部でもあります。もはや、誰の資源を支配できるか、あるいは隣国を支配することができるか、ということが問題ではなくなっています。今、重要なのは、アイデアと開放性と経済的開放性、政治的開放性の力であり、こうした力が、これらの対立の多くを克服できる、と私は考えています。従って、アジアは今後も引き続き、その方向へ進む必要があります。また私は、中核的な価値観としての民主主義と開放性の前進が、強大な力の関係では決して実現できないような方法で、こうした対立の一部を克服する一助となる、とも考えています。

 それでは、次に、そこの赤いスーツの方、どうぞ。

 ライス博士、ライス長官、ありがとうございます。発言の機会を与えていただき、どうもありがとうございます。私は、サイトウ・カヨと申します。政治学専攻の3年生です。

 私の質問は次のとおりです。私は、宗教と政治の関係に関心があります。イラクにおけるような紛争の後で、私たちの宗教が、民主主義と自由と、安全保障さえも促進し、安定した平和を築くために、どのような役割を果たすことができるとお考えになりますか。この点を知りたいと思います。どうもありがとうございました。

ライス長官 はい、宗教の役割と、それが政治および民主主義、そしてひいては平和に、どのように関連するか、ということに関する大変良いご質問です。

 これについては、2、3の点についてお話します。 まず第1に、民主主義と自由とは何かということの中核を成す普遍的な価値観について考えるとき、私たちは、それが2院制の議会か、議会政治か、あるいは大統領制か、というようなことを強調しすぎることがありますが、実は民主主義の本質とは、人々が思ったことを自由に言えること、自由に礼拝ができること、また男女を問わず子どもたちに教育を与えられることなのです。そして、これは大変興味深いことですが、最も教養の高い人も、最も無学な人も、皆、民主主義についてこうした基本を理解しています。

 自由に礼拝をする権利とは、礼拝をする権利でもあり、礼拝をしない権利でもあります。従って、米国には非常に信心深い人たちもいます。私は、自分が非常に信心深い人間であると考えています。しかし、米国政府の官吏として、私の自国に対する義務、また他国を援助する義務の一部は、宗教的良心の自由と、宗教的信念の自由が、民主主義の真の中核的価値観であると認識することです。

 宗教が人々を分断するために利用されてきた所、すなわちレバノンやイラクのような所では、民主主義的な組織、憲法が、個人の良心が民主主義のカギであることを認識することがとりわけ重要です。それは、この最も個人的な決断が他から強制されている限り、国民に真の自由はないからです。

 また、米国では政教を分離しています。しかし、民主主義国家がすべて政教分離を実行しているわけではありません。英国には国教会があります。従って、この問題にはさまざまな対応の仕方があります。しかし、真に重要な点は、人々が、この最も個人的な献身の対象を選ぶことができる、ということです。どのような方法でも自由に礼拝をする選択ができるとともに、どのような方法でも礼拝をしない選択をする意志が・・・選択をすることができなければなりません。

 そして私は、中国を訪問したら、信教の自由について語るつもりです。信教の自由は、これは宗教を他者に対する武器として使うということではありませんが、しばしば、社会における思いやりと良識の基盤となるものです。ですから、これは大変深い意味を持つご質問ですが、民主主義が正しく機能するために不可欠なものである、と思います。

 私は、ライス長官のお話を直接お聞きすることができたことに深く感謝しております。また名誉なことでもあります。

 北朝鮮と核兵器の脅威に関して、長官は、これから6者協議によって解決策を追求すべきだというお話をされました。しかし、1〜2年、あるいは3年がたっても解決されなければ、米国が直接北朝鮮と交渉する可能性があります。こうした手段の可能性が、長官のお心に、お考えの中に少しでもおありでしょうか。

ライス長官 ありがとうございます。米国は以前に1度、北朝鮮との直接交渉を試みたことがあります。1994年に米国と北朝鮮は枠組み合意に調印しました。ところが北朝鮮は、枠組み合意の外で、核兵器開発を行っていました。そして、米国はそこから教訓を得たと思います。当時は、枠組み合意が正しい行動であると考えられていました。私は、ここで歴史をさかのぼって疑問を呈するつもりはありません。

 しかし、私たちは教訓を学びました。それは、北朝鮮が近隣諸国を分断し、中国、日本、そして米国と、それぞれ個別に核開発計画についての対話を行うことができるならば、北朝鮮がこうした各国同士を競合させることが可能であり、北朝鮮は、「いつ核兵器開発を停止するのか。それまでは誰も北朝鮮を国際的な制度の完全な一員とは認めない」という、中心的な質問に対する回答を避けることができる、という教訓です。

 今、私たちには6者協議という手段がありますが、この協議の進行が遅いという意見があることを私は承知しています。私たちも、6者協議のより迅速な前進を望んでいます。北朝鮮が今交渉の席に着くことを望んでいます。しかし、私たちにとって6者協議の有利な点は、北朝鮮の近隣諸国が全員、北朝鮮に対する同一の基準、同一の要求に基づく同一のフォーラムで、同一の内容を北朝鮮に伝えている、ということです。私は、これは極めて重要なことであると考えています。

 また、各国が、異なる動機と異なる影響力を持ち寄って北朝鮮と交渉する、という点も重要です。そして、私たちは皆、北朝鮮に対処する努力を結集する作業を、さらに改善する余地があると思いますが、北朝鮮に対処することが容易でないことは、私が真っ先に認めるところです。私は、中国を訪れたら、北朝鮮を6者協議に復帰させ、また困難な課題を実際に解決する意志を持って協議に復帰させるために、中国がどのような外交手段をとれるか、ということを話し合いたい、と期待しています。

 はい、こちらの方。すみません、マイク担当の方は、いい運動になってしまいますね。

 私は、蟹瀬と申します。上智の卒業生で、フリーのジャーナリストです。私の母校をご訪問くださり、どうもありがとうございます。

 私は、エネルギー安全保障についてお聞きしたいと思います。ご存じのように、日本のエネルギー自給率はわずか4%であり、原油価格は急騰しています。日本は、米国の例に倣って、より積極的に原子力エネルギーを追求すべきなのでしょうか。

ライス長官 はい。私たちは皆、エネルギー安全保障とエネルギー需要の問題に直面しています。各国の経済の成長に伴い、環境にもやさしい、信頼できるエネルギー源を探さなければならなくなります。

 私は、インドの人たちとこの問題について話し合ってきたところです。パキスタンの人たちもこの問題を提起しています。言うまでもなく、エネルギー供給に対する中国の需要が、石油供給の逼迫と、それによる価格上昇の一因となっています。従って、各国の経済が成長するに従い、私たちは皆この問題に直面します。

 米国の見方としては・・・私は日本がどうすべきかを言うことはできません。それは日本の民主的なプロセスを通じて決定されるべきことです。しかし、米国の視点から、また連邦議会に包括的なエネルギー計画を提出したブッシュ大統領の視点からは、私たちはあらゆる供給源、あらゆるエネルギー供給源の可能性を開拓する必要があり、それには原子力エネルギーも含まれます。米国は長い間、原子力エネルギーから遠ざかっています。現政権の意見としては、私たちは広範囲にわたるエネルギー計画を持たなければなりません。また、私たちは、炭化水素への依存度を軽減する技術への関与あるいは支援にも力を入れています。その一例が、何年か前にブッシュ大統領が一般教書演説で発表した水素燃料自動車の開発計画です。

 私たちは、年間およそ58億ドルを気候変動問題に費やしており、そのかなりの部分が、環境にやさしい方法でエネルギー供給問題を解決する技術の追究に充てられています。従って、米国の視点に立って言えば、私たちは基礎的な供給源を広げなければならず、また外国の石油に対する依存度を軽減する必要があります。米国にとって中東の石油には、特にこの点で問題があります。しかし、私たちは供給の基盤を広げる必要性に迫られており、これを賢明な方法で実行する必要があります。そして、言うまでもなく、米国と日本は技術のリーダーとして、エネルギー供給が逼迫する中で、成長中の諸国の課題に取り組むために、エネルギーに関して、より集中的な対話をしてきており、またそうすべきでもあります。

 私は、生涯を通じてビジネスマン、そして国際コンサルタントを務めてきました。今朝の朝日新聞は、ジョージ・ケナン氏が101歳で亡くなったことを報道していました。今から50年ほど前、私はプリンストン大学のウッドロー・ウィルソン・スクールの大学院生でしたが、当時の同スクール学部長が、大学院生20人だけを集めて、ジョージ・ケナン氏と食事をしながら討議をする席を設けてくださり、私たちはケナン氏の封じ込め政策について話し合いました。

 長官は、北朝鮮などへの対処に際して、6者協議を提唱されましたが、こうした協議を通じて、北朝鮮の核開発の野望やその他の脅威を封じ込めることができるとお考えになりますか。また、同様に、米国はイランの核開発の野望も封じ込めることができますか。

ライス長官 ありがとうございます。まず、ジョージ・ケナン氏を失ったことが、米国にとって、そして世界にとっていかに大きな損失であるかということを、この機会に申し上げたいと思います。私は、個人的に、ケナン氏とその業績によって感化されました。直接お目にかかる機会も何度かありました。ケナン氏は、第2次世界大戦末期における米国の外交政策の偉大な立案者のひとりであり、この外交政策は、今日多くの人々が享受する自由をもたらし、今日の米国の多くの同盟関係を可能にし、また最終的にソ連の崩壊につながった各種の政策を実現する上で、主要な役割を果たしました。

 そして、ジョージ・ケナン氏は、特に素晴らしい表現を使って、それを伝えました。彼は、米国とその同盟諸国は、ソ連を封じ込め、ソ連が自らの内部の矛盾に対処せざるを得なくなるまで、封じ込めを続けるべきである、と述べました。そして、考えてみると、1980年代に、まさにその通りのことが起きたのです。ソ連は、自らの内部の矛盾に対処せざるを得なくなり、結局そうした内部の矛盾を乗り越えて生存することができませんでした。

 近代世界のためのそうしたドクトリンから得られる教訓は、もちろんそれぞれの状況によって異なりますが、ソ連の場合、時とともに発生した大きな変化のひとつは、言うまでもなく、ソ連が、依然として極めて攻撃的ではあったものの、国際協議に関与する意志をある程度示す行動をとり始めたことでした。その例が、軍縮であり、また東ヨーロッパの解放に極めて重要な役割を果たすことになった欧州安保協力会議でした。

 北朝鮮が、国際社会においてより適切な位置を得るために必要なことをする準備が、本当にできているのかどうか、私にはわかりません。しかし、現在の北朝鮮の行動はむしろ脅威をもたらすものであり、北朝鮮は協議を打ち切り、自らを核保有国と宣言しており、また、北朝鮮にとって異なる道を開くような戦略的選択、すなわち核兵器開発の野望を忘れ、核開発計画の検証と解体を実行する戦略的選択が可能であることを示すような姿勢で交渉に臨んではいません。 しかし、その準備ができていることを示すのは、北朝鮮の義務です。

 はっきりと申し上げますが、米国は引き続き、この問題の外交的解決のために尽力しています。外交的な解決が可能であると私たちは信じています。言うまでもなく、私たちは韓国との同盟を通じて、またこの地域における米軍の存在によって、北朝鮮の侵略をすべて抑止することができます。しかし、誰も、北朝鮮を侵略あるいは攻撃することを望んではいません。私たちは、朝鮮半島の和平を望んでいます。そして核のない北朝鮮を望んでいます。それが朝鮮半島で真の和平を実現する唯一の手段だからです。

 そのほかにも、北朝鮮に関しては解決すべき課題が多数あります。私たちは、日本人拉致被害者の問題が解決されなければならない、と述べてきました。北朝鮮のミサイルの問題、通常兵器の問題もあります。そして、北朝鮮の国民がどうなるのか、という問題もあります。これほど悲惨な状況にある国民は、世界でも他にほとんどないかもしれません。米国は、そして日本も、極めて切実に援助を必要としている北朝鮮の人々を、人道援助を通じて助けようと努力をしてきました。しかし、北朝鮮政府が、核開発の野心をあきらめる意志があるなら、同政府はまた、長期にわたって苦しんでいる自国民のために何らかの手を打つ手段を見つけることができるかもしれません。北朝鮮の国民は、現状より良い生活を送る権利があり、また率直に言って、より大きな自由の機会を与えられる権利があります。

 おはようございます。非常に包括的なお話をどうもありがとうございました。私は、上智大学比較文化学部の(聞き取り不能)です。

 私は、政治学を学ぶ者として、東アジアに関するお話に非常に関心があります。長官のお話は、米国政府だけでなく、国際関係を学ぶ者にとっても、大きな影響力を持つからです。長官のお話は、米国の外交政策を理解する上で、大きな助けとなります。

 私の質問は、米中関係に関するものです。長官は、中国を、戦略的パートナーではなく、戦略的競争相手である、と述べられたことがあります。それは、2000年の「フォーリン・アフェアーズ」誌に掲載された、国益を推進する論文でした。しかし、長官の最近のお話では、すなわち4日前にインドへ向かわれる途中でのお話では、米国の対中関係は建設的なものである、とおっしゃっています。これは、長官の中国に対する見方が変化したということなのでしょうか。あるいは現在では中国を戦略的パートナーと見なされているのでしょうか。

 同時に、米国と日本の関係はどのようなものであるとお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。どうもありがとうございます。

ライス長官 ありがとうございます。政府で仕事をするつもりなら、論文を書くべきではないということですね。実際に読まれる可能性がありますから。

 その論文は、中国が国際政治の新たな要因であり、しかも台頭しつつある要因だという事実を言っていることに間違いはないと思います。それは、ここ日本でも実感できます。また、遠く離れたメキシコでも実感することができます。

 私が最近メキシコを訪問したとき、メキシコでも中国の経済とその動向が話題になっていました。ですから、中国は台頭しつつある要因なのです。そして、新たな要因が存在するときには・・・政治学者でいらっしゃるあなたもご存知でしょうが・・・国際政治において新たな要因が存在するときには、必ず現状が良い方向か悪い方向かに変化する可能性があります。しかし、そのどちらかの実現が不可避ではありません。それが政策の役割です。それが外交と政治手腕と制度の役割です。

 私たちは時々、政治の・・・政治学者は、世界は偉大な力によって動かされていると考えることがあります。確かに偉大な力は存在しますが、人間の営為も存在します。また、私たちは、特定の政策を追求する決断を下します。従って、中国が新たな要因であることを理解し、中国が善悪両方の可能性を持っていることを理解し、いずれにしても中国が影響力を持つことを理解するならば、中国を、より好ましい進路に向けて後押しし、促し、説得することは、私たちの義務なのです。

 私たちがそれを実行してきたひとつの例が、世界貿易機関(WTO)への中国加盟に対する支持です。中国ほどの大規模な経済は、規則を基盤とする経済構造に統合される必要があるからです。そして今、私たちは、中国が特に知的財産権に関してWTOの義務を順守することの重要性を、中国に十分実感させなければなりません。

 また私たちは、これまでお話ししてきたように、北朝鮮問題などの解決に中国が多大な影響力を行使し得ることを認識しています。それは非常に好ましい役割です。中国は、ハイチで警察活動に関与しています。これは好ましいことです。テロとの戦いで中国が果たしてきた役割も好ましいものです。従って、私たちが中国と協力する手段はいくつもあります。

 一方、中国の国内の展開はまだ不確定です。また、信教の自由や人権の問題、そして台湾と中国の関係などを見ると、今後悪化するかもしれない問題点が懸念され、従って米国の政策は、そうした問題について状況の悪化を軽減する機会を最大限活用することを目指すものでなければなりません。

 そして最後に、この地域における中国の役割を考えるとき、私は、中国の果たす役割が拡大することは非常に重要であると思います。私たちは、拡大する役割を果たすことのできる、自信に満ちた中国を望んでいます。しかし、中国が、米国と日本のような民主主義同盟の枠内でそうした役割を果たすことが望まれます。それは、経済的な力やその他の力だけでなく、民主主義的価値観をも、この地域の中心にもたらすような同盟関係です。

 従って、これからの中国に目を向けるとき、中国がマイナスではなくプラスの役割を果たす可能性の方が高い環境を作る上で、米日関係、米韓関係、米印関係が、いずれも重要である、と私は強く信じています。これらの同盟は、中国に対抗するものではありません。これらは、安定した安全保障と、政治、経済、および価値観に基づく関係のための同盟であり、中国をこれらの関係の枠内に置き、中国が全く他と無関係に、こうした戦略的枠組みなしで行動した場合とは異なる発展の道に中国を向かわせるような同盟関係です。

 私は、(聞き取り不能)大学学長のホンドウと申します。率直に申し上げて、日本人の間では、近い将来米ドルが急速に下落する可能性を懸念する人たちが増えています。そこで、長官にお聞きいたしますが、外交政策の観点から、米国のドル計画をどのようにお考えになりますか。どうもありがとうございます。

ライス長官 ありがとうございます。私たちは、強いドルを望んでいます。しかし、通貨問題についてそれ以上私がコメントをするのは適切ではないと思います。

 米国が重点を置いているのは、米国内で、投資と事業開発を誘致できるような、より強い、より堅調な経済を築くことだ、と言うことはできます。ブッシュ大統領は、米国内で事業開発と雇用を維持する最良の手段は、米国を事業にとって最良の場所にすることである、と頻繁に述べています。

 そして大統領は、広範な計画を持っています。これには、貿易面で公正な競争条件を確保することによって、米国の双子の赤字、貿易赤字に対処することが含まれます。残念ながら現在私たちが体験しているような紛争が、米国にとって極めて重要であるのは、そのためです。それは、米国経済が自由な貿易社会で公正な競争条件に真に依存できるかどうか、を表すものだからです。中国の大規模な経済が、公正な競争条件を促進するものであり、特殊な手段や状況を独占しないものとなるために必要な構造改革について、米国が中国と協議を行ってきたのも、そのためです。

 また私たちは、財政規律を通じた努力もしていますが、これは容易ではありません。米国は、景気後退、戦争、そして9月11日の米国に対する大規模な攻撃を体験し、それによって米国の経済成長が極めて大幅に縮小したからです。しかし、大統領は、財政規律を復活させようとしており、非常に厳しい予算内でそれを実行することを連邦議会の課題としています。そして、それは米国内の規制改革を意味します。また、すべてを訴訟化する傾向、その結果、企業が常に訴訟を恐れて、米国内で事業を設立し運営することが困難となる傾向を改革することを意味します。

 また大統領は、米国の長期年金受給に関する問題にも取り組もうとしています。米国では、年金制度を支える国民の数が減っているときに定年を迎える私のような国民が、巨大な波のように押し寄せてきています。ところで私は・・・皆さんが計算を始める前に申し上げますが、私は1954年生まれですから、今50歳です。私のような国民は、社会保障制度の危機の真っただ中に巻き込まれています。そして、これが続けば、もっと若い労働者の状況がどうなるかという問題は言うまでもありません。

 そこで、大統領は・・・先にエネルギーに関するご質問がありましたが、包括的なエネルギー計画も、この計画の一部となっています。従って、大統領には米国が世界の経済において強い立場で行動できるように、米国の経済改革と構造改革に対処するための広範なアジェンダがあります。

 米国の外交政策目標について質問があります。西側では、不安定な諸地域において、勇気付けられる勝利がいくつか見られ、私たちはこれを大いに歓迎しています。そして、これは米国の多大な関与の成果です。米国は、西側には大きく関与してきました。しかし、東側については多少軽視してきたと言っても大げさではないと思います。6者協議が設定され、中国の影響力が使われてきましたが、これは、米国が表立っては関与できないからである、と私は考えています。

 しかし、長官がおっしゃったように、東側の状況はどうしたら改善されるのでしょうか。必ずしもそれが問題なのではありません。多くの人たちが北朝鮮の核の脅威を取り上げていますが、米国は中国に多大な信頼を置いているように思えます。しかし中国は軍事力を大きく強化しており、その目的は米国と競争することである、と私たちは考えています。従って米国の人々は・・・米国の政策は、西側から東側への関与に、より重点を置くべきであると思います。

ライス長官 私たちは、中国の軍事力強化を懸念しています。これに関して、私たちの最良の目標は、強力な同盟を維持することであり、最良の対応は、強力な同盟を維持し、米国の軍事力が誰にもひけをとらないようにすることです。そして、私たちは、米国の軍隊を近代化し、その力を維持し、また軍隊が平和と安全保障を保護するとともに民主主義の定着できる環境を提供する能力を維持するために必要なことは、必ずすべて実行します。また、中国が6者協議に関与しているのは、核武装した北朝鮮は中国の利益にはならないからです。つまり、ここには偶然ながら利害の一致があります。

 しかし、民主主義の計画については・・・カリー神父がここに立っていらっしゃるので、急いで申し上げます。そろそろ話を切り上げなければならないという意味であることは了解しております。

 民主主義に関するご質問は、とても良い論点です。ヨーロッパでは、また日本でも、第2次世界大戦後は、平和と安定と経済的な繁栄には民主主義の基盤がなければならないという考え方が、戦後の米国の外交政策策定者によって十分に理解されていました。すなわちケナン、アチソン、マーシャル、そしてトルーマン大統領といった人たちは、私たちの価値観と安全保障が切っても切れない関係にあることを理解していた、と考えられます。

 米国の中東での政策は、さまざまな理由で、これとは異なるものでした。その理由は、例えば石油供給の確保に関係するものであったかもしれません。あるいは中東の価値観は民主主義の追求とは相いれないものであるという考え方もあったかもしれません。また、ブッシュ大統領が最近述べたように、米国が60年間にわたって追求してきた中東政策は、安定を求めるために自由の欠如を無視したものであり、その結果、どちらも得ることができませんでした。その代わりに得たものは、怒りと屈辱感に満ちた状態に陥った地域でした。それは、9月11日に米国のビルに飛行機を衝突させ、また高い教育を受けた者も含め、人々に憎悪のイデオロギーを推進させるほどの大きな怒りでした。表面の虚偽の安定の下で、怒りが渦巻いていたのです。   そのことが明らかになった今、米国が世界のどこにおいても、自由を求める人間の願望に目をつぶらないようにすることは、米国の義務であり、米国の政策でもあります。私たちは、個人とはまさにその本質上、自由を求めるものであり、自由の中で暮らすことを求めるものである、という信念を前提として前進します。そして、そこから出発するならば、中東でもビルマでも北朝鮮でも、地球上のどこにおいても、こうした人々のために明確な主張をすることに専念すべきです。

 過去には、ロシア人は民主主義に関心がない、あるいはアジア人は民主主義に関心がない、あるいはアフリカや中南米やその他の地域の人々は民主主義に関心がない、と言われたときもありました。しかし今では、民主主義の下で可能となるような創造性が存在して初めて、人々が繁栄することがわかっています。従って私たちは、そうした過去に戻ることはありません。

 そうは言うものの、民主主義を構築することは、多民族の状況においても、単一民族の状況においても、容易なことではありません。私は、アフガニスタンを訪問してきたところです。アフガニスタンにおける民主主義の構築は、困難なものとなるでしょう。私たちは、これを見守っています。イラクでも、中東でも困難な作業となるでしょう。また、まだその段階に達していないアジアの各地でも困難となるでしょう。しかし、民主主義制度の大きな価値は、それ自体、人々が平等な立場で、意見の相違を解決するための場所として存在するという点です。

 私はいつも、米国の建国当時のことを考えます。今日の米国は、言うまでもなく、成熟した素晴らしい民主主義国家です。しかし、建国の父たちが「われら人民」と言ったとき、その中に私は含まれませんでした。私の祖先は、1789年の妥協案により、投票権に関しては5分の3人分として扱われました。それを今の米国の状況と比べてみてください。

 米国の自由の偉大な立役者であるトーマス・ジェファーソンは、「われわれに命を与えた神は、同時にわれわれに自由を与えた」と言いました。しかし、ジェファーソンは奴隷を所有していました。彼も、建国の父の多くと同様に、完璧な人間ではなかったのです。しかしジェファーソンは、そして建国の父たちは、民主主義制度を築き、解放と自由と人間の尊厳の原則を掲げたならば、人々はいずれそうした偉大な原則に向かって、苦労し、つまずきながらも前進することができ、その結果人類は向上する、ということを認識していました。

 従ってこれは、私たち全員が関与する民主主義のための長い道のりです。しかし、今後の世界の安定と平和のためには、この過程を成功させることほど重要な作業はおそらくないと思われます。そして私は、まさにそれを実行するための不可欠かつ偉大なパートナーである日本を訪問できましたことを、大変光栄に思います。どうもありがとうございました。