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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

J・トーマス・シーファー駐日米国大使の読売国際経済懇話会における講演

2007年6月15日

東京

 本日はお招きいただきありがとうございました。読売の皆様とここで再びお会いできて、たいへん光栄です。また、長年にわたり多くの喜びを日本の野球ファンに与えてこられた渡辺さんもここにいらっしゃることを、特に光栄に思っております。そして、私は、ジャイアンツが好調なこの年に、こちらで皆様にお話ができることを特に喜ばしく思っています。私のメッセージは、ジャイアンツが不調な時に比べ、はるかに温かく、友好的に受け止められるのではないかと思っています。

 米国と日本の経済は世界で第1位と第2位の規模を持ち、他国を大きく引き離しています。両国それぞれの行動や発言は広範囲にわたり影響をもたらします。しかし、両国が共同で取る行動や発言の影響は、実に大きなものになりえます。合わせて世界の国内総生産(GDP)の40%を占める米国と日本は、両国民と世界に利益がもたらされるよう、互いの経済活動について協議し調整する義務があります。

 本日、私は皆様に、日米両国の今後の協力の機会について私の考えをお話したいと思います。まず、近頃よく耳にする話をここで繰り返しましょう。それは日本が立ち直ったということです。最近日本は、戦後有数の長期景気拡大の局面を迎え、実質的な経済成長を享受しています。この拡大は、主として小泉前首相が着手した改革によるものです。今日、日本経済は、1990年代初めの「バブル」によって生じたマイナスの影響をほぼ乗り越え、活力を取り戻しています。

 内需、特に消費が、成長の強力な推進役としての役割を果たし始めている兆しがあることは心強いことです。この傾向が続けば、日本の回復の持続性が確実なものとなり、世界の繁栄に大いに貢献することになるでしょう。

 私たちは、中国が世界の経済成長の新しい原動力となるだろうという話をよく耳にします。時に、私たちは、既に日本の経済規模が中国の1.6倍以上に達していることを忘れてしまいます。世界経済に与える中国の影響力が日本と同等、もしくはそれ以上になるまでには非常に長い年月がかかるでしょう。日本経済が健全で成長していれば、ほぼ確実に世界経済も健全で成長しますが、日本経済が停滞して硬直化すれば、皆が望むような世界経済の実現は不可能となります。日本は現在、重要ですが、今後も末永く重要であり続けるでしょう。

 日本経済の規模は、たとえその成長が小幅であっても、必ず世界中に極めて大きな経済的影響を与えるほどの大きさです。分かりやすく言うと、2006年の日本の経済成長率はわずか2%強でしたが、GDPでは、ルーマニアのGDP総額にほぼ匹敵するほどの絶対的増加が見られました。

 もし日本の成長率が倍増して、例えば1980年代後半のように4.4%になったら、日本経済の成長はニュージーランドのGDP総額にほぼ匹敵することになるでしょう。別の見方をすれば、日本はニュージーランドと同じ経済規模の国を毎年作り出すことができるということであり、これによって、日本だけでなく世界中で多数の雇用が創出されることになるということです。

 日本の回復から直接的な利益を受けてきたのはアジアにある日本の近隣諸国であり、今後もその状況が続く可能性が高いと思われます。東アジアの対日輸出額は過去5年間に32%増加し、現在では日本の輸入額の20%以上を占めています。こうした輸出を促進しているのは、一次産品に対する需要の増加と、最終製品への消費者需要の小幅な増加です。海外生産拠点として日本企業が特に好むASEAN諸国は、消費財の需要増加による恩恵を十分に受けられる立場にあります。

 言うまでもなく、中でも最も重要な生産拠点となった国は中国です。中国経済と日本経済の相互補完関係は際立っています。これは、東アジアに多国籍の生産チェーンが存在するという新たな現実を反映するものです。つまり、多くの日本企業が中国で最終財を生産していますが、それらは、日本やアジア諸国にある日本企業の子会社から輸入する部品を使って組み立てられたものです。こうして生産された製品は、米国、欧州、日本で販売されています。香港を含めた場合、中国は2004年以来、日本の最大の貿易相手国であり、現在は日本の貿易総額の20%を占めています。一方、米国は日本の貿易総額の17%を占めています。日本は中国にとって、米国と欧州連合に続く第3位の貿易相手国であり、中国の貿易総額のほぼ13%を占めています。中国は日本にとって、他国をはるかにしのぐ最大の輸入相手国で、2006年の日本の輸入総額の約20%を占めています。こうした動きは、日本と中国の経済展望が、アジア各国と世界中に及ぶ影響力を持ちながら、どれほど密接につながっているかを裏付けるものです。

 当然のことながら、日本は、締結済み、あるいは交渉中のさまざまな経済連携協定を通じて、アジアと世界の国々に働きかけてきました。現在進行中の交渉がすべて成功裏に終結すれば、日本は直接的な2国間の取り決め、あるいはASEANや湾岸協力会議などの地域機関を通して、20カ国以上との間で、特恵的な貿易および投資協定を締結することになります。私たちは、これらの協定によって、すべての関係国の経済の自由化、成長、そして繁栄が促されることを願っています。これらの協定が、自由貿易の原則を採用し、保護主義を排除するものであればあるほど、世界経済に好ましい影響を与える可能性が高まるものと、私たちは信じています。

 この主張を裏付けるものとして、米国における日本の経験をお話しましょう。米国人の意識の中では、日本は、米国人の生活において特別な位置を占めていると考えられてきました。これからもそれは変わらないでしょう。これはアジアでは並ぶものがない位置であることは確かであり、世界的に見てもおそらくどの国も及ばないでしょう。

 今日の米国経済では、日本のプレゼンスが不可欠です。米国の貿易相手国として中国が重要な位置を占めるようになっていますが、それでも日本は、2006年には米国にとって第3位の輸出市場でした。2003年に米国商務省が米国内の外資系企業を対象に調査を行ないましたが、その時点で、米国にある日本企業の子会社は、60万人の米国人を雇用し、年間380億ドルを超える報酬を支払っていました。日本の対米投資額は2005年末時点で1900億ドルを超えており、対米海外直接投資総額のほぼ12%を占めました。これより大きな投資をしたのは英国だけです。

 日本の投資家は、米国の経済成長に必要な資本の大部分を提供してきました。一方、米国は、ここ日本で得られるよりも高い収益を投資家に提供してきました。

 日本のブランドは今や、米国市場で非常によく知られているので、米国人はそれが外国のものだということを忘れがちです。この傾向が最も顕著なのは自動車産業でしょう。昨年日本の自動車メーカーは、米国で約340万台の車を生産し、米国の自動車総売上高の35%を占めました。

 米国商務省は、来年までに米国の自動車産業への日本の投資が300億ドルを超えると予測しています。特に米国におけるトヨタ自動車の施設拡大は目を見張るものがあります。トヨタは、現在、テキサス・インスツルメンツ社や、シスコシステムズ社よりも多くの米国人を雇用しています。米国人はトヨタが米国で行なってきた投資を高く評価していますが、それは、こうした投資のおかげで質の高い雇用を創出し、優れた製品を手ごろな価格で生産できることを知っているからです。

 また、米国での日本の足跡のうち、人的側面も忘れてはなりません。長年にわたり、何十万もの日本人が米国で生活し学んできました。2005-2006年度には、3万8000人以上の日本人留学生が米国で勉強しており、日本は米国に送った留学生の数で世界第4位でした。1990年後半には、米国における日本人留学生の数は、他のどの国の留学生よりも多かったのですが、最近では、インド、中国、そして韓国からの留学生の数が急増したために、日本は4位に後退しました。とは言っても、ほかのどの主要先進国よりも多くの若者を留学生として米国に送り続けています。国境、言語、そして歴史的起源を米国と共有するカナダでさえも、米国の教育機関で学ぶ学生の数は日本人学生をはるかに下回っています。

 また、米国では日本の大衆文化も人気を博しています。米国の出版社は毎年およそ3億ドル相当の漫画を販売しており、そのほぼすべてが、日本の原作の翻訳本です。2004年現在で、米国にはおよそ9000軒の日本食レストランがあり、米国が世界最大の日本酒輸入国となる一因となっています。事実、輸出される日本酒のほぼ3分の1は米国向けです。日本の交渉担当者が米国人との取引、それも夜更けの取引に長けているのは、これが理由かもしれません。

 これらはすべて日本が米国人の生活の一部となっていることを示すものです。米国人は日本食を食べ、日本車に乗り、日本の物語を読み、日本人の若者たちを教えていますが、こうしたことのほとんどすべてについて、外国から来たものと意識せずに行なっています。その結果、米国における日本のイメージはとても肯定的です。

 日本の外務省が行った調査によると、米国のオピニオンリーダーの91%と、一般の米国人の69%が、日本を信頼できる同盟国、または信頼できる友好国とみなしています。米国と共通の価値観を共有するかどうかという質問に対しては、一般市民もオピニオンリーダーも、米国人と同じ価値観を有する国として、日本は英国に匹敵すると答えています。

 長年にわたって米国が日本と共に築き上げてきたグローバル・パートナーシップには、日米関係の緊密さと、両国が共有する共通の価値観が反映されています。私たちは、今日世界が直面しているありとあらゆる問題に共同で取り組んでいます。日米間のパートナーシップほど、世界にプラスの影響をもたらす可能性が高い協力関係はほかにはありません。

 日米同盟は、アジアにおける両国の安全保障態勢の要です。米国は、日本とアジア地域に駐留する米軍の再編に対する日本政府の強力な支援を高く評価しています。昨年、日米両国は、21世紀に向けた日米同盟を構築する包括的合意に達し、現在はその実施を期待しています。私たちは、この合意が、日本と米国にとっての安全保障を強化する一方で、この地域のほかの場所における紛争の脅威を低減するものである、と心から信じています。これに加え、米国は、安倍首相が就任早々に中国と韓国を訪問したことや、6者協議で日本が非常に積極的な役割を果たしていることをはじめとする、日本の地域外交を強く支持しています。これらの取り組みは、2国間のパートナーシップを補完し、国際社会における日本の役割を強化するものです。

 朝鮮半島の非核化は、引き続き日米両国の目標です。6者協議はなかなか進展しませんが、米国は日本が極めて重要な役割を果たしてきたことを高く評価しています。また、米国は、6者協議の枠組みの中で拉致問題を扱うことの重要性を認識していることをお伝えしておきます。罪のない市民が他国によって拉致されるなどということは、いかなる文明国も受容することができません。これは、どの道徳観と倫理観に照らしても明らかに不当なことです。

 米国と日本は、世界第1位と第2位の開発援助供与国であることに、当然ながら誇りを持つことができます。私たちは、自由と民主主義という共通の価値観に基づいて一層協力し合うことを期待しています。麻生外務大臣は、日本人は今や「友好国や同盟国と共に、一致協力して活動に取り組む国民」として見られているという言い方で、日本政府の国際的取り組みを説明しています。

 日本は2005年に、180億ドル超の政府開発援助を供与しました。日本は、イラク復興のために、補助金、融資、債務救済の形で総額120億ドル以上の財政支援を行い、米国以外で最大の財政支援国となりました。日本はアフガニスタンに対しても、2002年以降総額14億5000万ドルの支援を行っており、第3位の支援国となっています。この資金は、道路や空港の建設、そして保健や教育サービスの促進のために利用されています。しかし、日本は、国際平和と安全を維持するために、資金だけなく、さらに多くの貢献をしてきました。世界各地での平和維持活動に、およそ5700人の日本人が参加していることは承知しています。

 国連、世界銀行、および国際通貨基金(IMF)への第2位の資金拠出国である日本は、国際機関を通じて活動する国際社会のリーダーです。米国と日本は、IMFの大胆かつ抜本的な改革について密接に協力し、IMFの管理がグローバル経済の変化を反映し、IMFが今日の国際金融制度において重要性を持ち続けられるようにしました。

 来年から日本は、G7とG8の議長国として、また2010年のアジア太平洋経済協力閣僚会議(APEC)開催国として、特に重要な主導的役割を担うことになります。こうした国際会議の場は、日本がその指導力を全世界に示すための絶好の機会になるでしょう。米国は、これらの会議が着実で前向きな成果を上げることを確保するために、日本と密接に協力することを期待しています。

 純粋に2国間の話としては、先ごろキャンプ・デービッドで行なわれたブッシュ大統領と安倍首相の首脳会談で、両国の経済の方向性が決まりました。日米の首脳は、知的所有権の促進と保護、エネルギー安全保障の強化、貿易フローの安全と効率性の向上、および政府の規制手続きの透明性の向上に向けて、2国間での取り組みを強化することを誓いました。また、日米は、世界貿易機関のドーハ・ラウンド交渉を成功させたいという願いを表明しましたが、ドーハ・ラウンドの妥結によって新しい貿易が生み出され、成長と開発が促進されると信じています。

 また、私たちは、アジア太平洋地域の自由貿易地域の設置を含めた、太平洋を横断する経済統合を加速させるAPECの取り組みを支援することを誓うとともに、日米それぞれが第3国と結ぶ自由貿易協定と経済連携協定の情報の共有を進めることについて合意しました。さらに、エネルギー安全保障と気候変動への統合的アプローチについても協力をより緊密にすることで合意しました。

 この意欲的な政策の根底にあるのは、次第に迫り来る将来の経済問題への取り組みを先送りにすることはできないという認識です。今年に入って安倍首相は、自分の経済政策を「新成長戦略を力強く推し進める」ものであると説明し、今後5年間の改革目標をアジアの成長と革新の波に乗るためのものと位置づけました。現在の課題は、長期にわたる安定した経済成長を確実に実現するための具体的な改革措置を特定し実施することです。

 日本の多くの評論家が述べているように、日本では数年前から景気回復が続いていますが、思っていたほどの堅調さは見せていません。日本社会が急速に高齢化しており、それによって財政負担が増加することが予想されるため、生産性の向上、規制の緩和、需要の刺激、そして成長の促進に向けた新しい措置を取ることが望ましいだけでなく、不可避でもあります。私たち、つまり米国と日本が協力すれば、これらの対策を取るのはより容易になるでしょう。

 日米両国は、サービス貿易の自由化を促進することで大きな恩恵を受けますが、ある調査では、製造業と農産物の貿易を世界規模で自由化すると、日本だけでも年間540億ドル以上、米国で160億ドルの経済利益を生み出す可能性が示唆されています。こうした潜在的利益は、日本のあらゆる経済分野で大幅な改革を進めることに対する国内の反対を和らげるはずです。保護貿易主義によって、日本がドーハ・ラウンド交渉などの国際貿易の自由化の取り組みにおいて主導的役割を果たすことが妨げられることがないように願っています。

 ここ日本において、労働市場の柔軟性の拡大は、日本が将来の問題に対処するに当たり大いに役立つでしょう。日本の労働資源、特に女性労働力の十分かつ効率的な活用は、生産性を大幅に向上させる可能性があります。また、保護された非効率的な部門から生産性の高い職業への労働者の流動性を高めることも、今後数年のうちに日本が直面する人口動態上の問題の解決策を見出だす上で極めて重要といえます。安倍首相が昨年秋の所信表明演説で述べたように、日本は「誰でも再チャレンジが可能な社会」を目指すべきです。労働力の流動性が高まれば、おそらく日本の労働者の所得能力と雇用保障も向上するでしょう。

 私たちは皆、工業製品で日本の技術が世界をリードしていることはよく知っています。しかし、日本の一部の産業部門では、外国の同じ業界に比べて、生産性のレベルが驚くほど低い状態が続いています。皆様はすでにご存知かもしれませんが、日本の内閣府が行った最近の調査では、日本の生産性は先進国の中で最も低く、米国の70%しかないことが判明しました。事実、過去15年に日本の生産性は平均1.5%の割合でしか伸びていません。主な理由は、日本でGDPの3分の2を生み出すサービス部門の平均生産性が極めて低く、米国のわずか40%でしかないからです。ビジネスサービス、通信、農業、民間航空、保健医療などの規制産業の多くに、今日の日本経済を成長させる最大の可能性があるにもかかわらず、これらの規制産業は、多くの場合、参入、製品、および技術に関わる広範な規制によって、国内外の競争から庇護されてきました。競争、新規参入、および新製品導入を阻害する障壁の除去を目指す構造改革と規制緩和に、日本企業が強く引き付けられるのはそのためです。

 また、日米両国は、効率的な資本市場が好調な経済の活力源であり、急速に変化する世界経済で競争力を確保するためには、投資家の信頼と適切な規制が必要であることを認識しています。重要なことは、市場整合性と企業家精神の間で適正な均衡を保つことであり、この均衡は市場の発展に従って継続的に見直されなければなりません。日本は1990年後半から金融市場改革を推進するとともに、金融庁の設置以来、金融分野での規制環境の改善を進めてきました。しかし、東京が他の主要金融市場と競争するためには、まだやらなければならないことがあります。米国は、東京をさらに大きな世界金融センターにするという日本政府の目標を歓迎します。

 また、金融仲介活動における政府の役割の縮小も、日本の金融市場の効率性と競争力を高めるために極めて重要です。この点に関し日本政府は日本郵政公社の民営化と、その他の数多くの政府金融機関の合理化・民営化の計画を掲げ、重要な措置を取りました。日本郵政公社は世界最大の貯蓄会社と世界最大の生命保険会社を運営するため、郵政の民営化は日本経済に莫大な影響を与えるでしょう。また、民営化の方法は世界経済にとって極めて重要となるでしょう。

 民営化に当たり、外国および国内の民間企業が公正に競争できるよう、民営化後の郵政金融子会社が新商品を市場に投入する前に、日本が平等の競争条件を整備することが重要です。最後に、日本は特に、合併・買収を通して対日外国直接投資(FDI)を増加させる努力を続けるべきです。米国は、日本のFDIの規模を拡大するという日本政府の約束を安倍首相が再度明言したことを歓迎します。米国は、これまで日本の生産者や投資家に対して、特に大きく市場を開放してきました。これは苦情ではありません。その結果として、米国の経済が強化されました。米国は他のどの主要先進国よりも、高い生産性、堅調な雇用増加、大幅なGDPの増加を享受しています。米国経済への日本の参加、つまり日本のプレゼンスは、米国人にとって無数の利益を生み出しています。

 しかしながら、理解し難いのは、日本で米国が経済的プレゼンスを高めることについて、多くの日本人が根強い不安を抱いていることです。最終的には、この不安が、特に実際の政策となった場合には、日本に悪影響を及ぼすと思います。なぜなら、世界経済が持つ活力と創造力を最大限に活用する日本の力を弱めるからです。また、ほかの国々への日本の投資に対して反発を買う危険があります。

 歴史を振り返ると、どの国でも経済統合に対する社会的・政治的抵抗が常に見られます。私たちは皆、保護主義の議論を知っています。それは、既に持っているものを失うことに対する本能的な不安につけこむものです。経済統合の拡大がもたらす生産・競争パターンの変化が、一部の労働者の生活や企業の業績を脅かすことは避けられません。そして、当然の反応として、彼らが変化に抵抗し、保護主義に頼るということは理解できます。しかし、このような反応に屈服することは、日本の国民から、経済統合拡大による恩恵を奪うだけでなく、将来の発展も奪い、報復を呼ぶことになります。競争に対して市場を閉鎖することは、誰の利益にもなりません。逆に誰もが損をします。

 では、米国と日本にとってこれは何を意味するのでしょうか。理想的には、今から10年後に、アジア太平洋の自由貿易地域の実現に向け、大きく前進していることが望まれます。できればその前にも、米国と日本が、現在よりはるかに緊密な経済関係を構築すべく具体的な措置を講じることが望まれます。当然ながら、市場開放を拡大し交流を発展させることは、最終的に競争の拡大につながり、その結果、さらに大きな「変化」が起きることになります。しかし、まさにそれが狙いなのです。21世紀の課題への対応を可能にする、効率性、機会、そして活力を見出すには、変化を受け入れなければいけません。しかし、これを実現するには、日本は、現在の景気回復を維持し、生産性を向上させ、高齢化・人口減少と累積した巨額の財政赤字という2つの課題に対処するために、今後も経済改革の道を歩む努力を続けなければなりません。

 この地域で、経済力、共通の利益、そして共通の価値観をすべて2国間で共有しているという点で、米国と日本に勝る国はありません。米国と日本ほど太平洋の両側をつなぐ優れた架け橋となることができるパートナーはほかにありません。米国と日本の国力と繁栄を持ってすれば、アジアと世界が新たな世界の課題に対応するために必要な政策や措置を2国間で、また全世界で推進することができます。私たちの子孫のために誰もが望む、平和で繁栄する世界の構築に向けて協力し合うことを決意しましょう。

 ありがとうございました。